13年目のW11-逆風に立ち向かう中国Eコマース大型キャンペーンの今を語る-後編
中国ないし世界最大なECキャンペーン「W11」。今年は、「W11不要論」「W11マンネリ論」が蔓延し、「反消費主義」の波に大きく叩かれ、様々な逆風が起きている一方、「米中貿易戦」の国際的な背景における中国では、W11による国内消費への刺激も欠かせるものではないというジレンマ。その実態を語ります。
■注目すべきポイント③:データ&コンテンツマーケティング
ここ数年ネット人口の横ばいとなり、人口増加のボーナスがなくなった今の中国のインターネットでは、熾烈なトラフィック争いで勝ち抜くためには、「データ活用」による細分化されているマーケティングが求められる。
各プラットフォームがほぼ無償提供のデータ基盤、マーケティングエコシステムとツールを駆使し、様々な施策とオンオフのタッチポイントやデータが統合されていくマーケティングPDCAがもはや現在中国で戦う各企業のスタンダードとなっている。
例年通り各プラットフォームも各地方テレビやOTTプラットフォームと一緒にW11の特番を放送。タレントや有名人の参加以外には、より観客とのインタラクティブの視聴が強調される。アリババの特番では、現在中国で若者に大人気で、社会現象となる「劇本殺」(マーダーミステリー)のストーリーが設定されており、4つの舞台にわたり、観客と一緒に謎解きをしながら、テレビとPCモバイルアプリのスクリーンをシームレスにクロスオーバーさせ、買い物体験を提供。
買い物とコンテンツの融合がさらに進んでおり、今世界で流行りの「メタバース」や「NFT」「サイバーパンク」などの話題を取り入れて、さまざまな買い物企画と展開。
■注目すべきポイント④:国産「新消費ブランド」の蜂起
「米中貿易戦」や「コロナによる『鎖国』状態」が続いている中、近年国産ブランドは破竹の勢いで成長している。「新消費ブランド」と呼ばれる国産ブランドは、高付加価値の商品や今までのないブランド体験を創出することで、若い人を中心に人気を集めている。
■考察コラム・新興中国産ブランドに対し、日本の一般消費財企業は中国でどう戦うか?
①チャンネルの革新(EC、OMO)は、やるかやらないか検討する場合ではなく、もはややっていない企業とブランドはすでに生きる空間が中国では残っていない。日本も時期にこのような時代が訪れる。
②ブランド力は、唯一海外勢が現在多数の中国ブランドに勝てるポイントである。ただ、この優位性も中国ブランドの急速の成長により、ますますなくなりつつある。「安心・安全」以外のブランドの価値、体験をいかに作って、新ブランドの開発や既存のブランドの若返りを目指すべき。
③商品開発や生産の革新スピードは中国ブランドどころか、欧米ブランドにも遅れている。せめて中国向けの商品は、DXの稟議や決断を早まって、D2Cブランドの開発、アジャイル生産に力を入れるべき。
■終わりに・激競争の「内巻社会」と「反消費主義」の風潮の下、中国消費の行き方
※「内巻」 (involution)とは、学校、職場、社会生活などで、非理性的な競争が繰り返され、その結果、競争が激しくなるだけで、誰も勝者になれないという意味。
※「反消費主義」は、消費主義、物質的財産の継続的な購入と消費に反対する、社会政治的イデオロギーである。 反消費主義は、環境保護、社会階層化、社会統治の倫理問題など、公共福祉を犠牲にして財政と経済の目標を追求する企業の私的行動を反対している。
中国消費が停滞するのか?日本のような低欲望社会に陥るのか?
この質問を解くためには、なぜ中国人がこれまであれこれ買いまり・爆買いしまくるかかから考察してみる。今年のW11のアリババのCMが描いた通り、W11は一見単なる「買い物」という行為だが、中国人にとって「買い物」以上の意味合いがある。「買い物」によって、過去30年自分の「生活」そのものが変えられてきて、今後も変えられていくことに対する期待と思いが込めているからである。
いろいろあったが、結局W11でみんなが買い物をしたり、消費を伸ばしている理由は、まさにそこにあると思われる。
努力して、一所懸命に生活を楽しむこと、生活をよくできること。
苦しい生活を楽にするのではなく、どんどん新しいこと、わくわく楽しいことがまだまだある。それが、今の中国社会の大多数の人の思いであり、信じていることでもある。
(日本だと、もしかしたら若者にでさえあまり響かない言葉だが・・・)
「国や社会をよくしよう」のではなくて、「自分の生活」をよくしようというモチベーションを結果的に社会をよくすることにつながっている。
結局このような社会全体の思いこそが、まさに中国経済、消費の成長をまだまださせつづけている「原動力」ではないかと私が思います。
<完>
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