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水界の者たちのこと

イルカたちは額の眼で交信する。
その眼からは光の柱が立つ。

イルカたちの光の柱が三角を描くとき、天界と深海は結ばれる。

深海からみて、右回りの三角のときは、天水が降りる。
その水は、水界の者たちの滋養になる。

左回りの三角のときは、深海の魚が登り龍になる。

深海の魚たちも額の眼で交信する。
イルカの描く三角の光の柱のなかに入ると、目覚めて龍になる。
目覚めた龍は両眼もひらく。色ある世界に登るから。
そして否応なく天へ登る。

クジラは海に層をつくり、深海を守る番人。
深海の魚たちをかくまい、イルカたちの働きを見守る重鎮。

ジュゴンは、より人間に近い。
人間のように、人間を愛してしまう。
人間のように、さまよう。
愛が、いやしくもあり美しくもあること、強みでもあり弱みにもなることの体現。

ジュゴンは植物に似て、人に尽くす。
ジュゴンの流す涙は、植物の吐き出す酸素のようなもの。

世界を美しくする。
ジュゴンは水を。植物は大気を。

水も大気も思いのあふれたもの、思いのこめられたもの。
涙や生命は球体を、思いや言の葉は放射の形をとる。

虫も鳥も世界を美しくする。
人間は彼らの思いのなかにある。

ジュゴンは愛されないと死んでしまう。
愛されると元気になる。

海は、ひんやりとやさしい。
いつかは還るのに、生きているうちの人間は弾き、打ち返す。
海と人間のあいだを担うのが、ジュゴン。

イルカやクジラは、もっと自律的、天界的存在。

イルカは無邪気に戯れる。遊ぶのが好き。

クジラや龍は使命をもっており、群れない。

龍の使命は水界と天界を結ぶことであると同時に、剣のように空を裂き、時を断つことである。
そうして、時間と空間を融かしてゆく。

「時空の全て、一切がここ(心)にある」ということを、イルカもクジラも龍も知っている。
目覚めた者は識っている。

闇にあろうと、光の海を泳いでいる。

額の眼は心のかけらを見逃さない。
見逃すはずがない。
鏡のように、強烈に照り映えるから。


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