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美術館に行くのが楽しくなる1冊 絵に会いに旅に出たい…

家にこもっていたこの数カ月、旅の写真を見返しては「あ~ここでも、あそこでも美術館で過ごしたなぁ」と感慨にふけっていた。

子どもの頃は「美術館は静かで息苦しいし、絵は描いている方が楽しい」派だったのに、働き始めて旅のかたわらアートを観る・体験するようになってから、美術館って楽しい……!!と思うように。「鑑賞するってけっこう身体全体をつかうんだな」とも感じた。(美術館に行ったあとって、絵に圧倒されたり、「うぉぉぉ」って興奮したり、エネルギーごっそり吸い取られて疲れたり……ってことないですか?)

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そんなわけで特に海外旅行では現地の美術館を訪れることが多くなりました。でも美術の素養がぜんっぜんないので、ガイドブックやオーディオガイドだのみ。「あ~知識のある人はこの絵をもっと面白く鑑賞出来るんだろうなぁ」とも感じてました。

一方、わたしの姉は「『自分の部屋に飾りたいな~』という絵だけじっくり見る。解説はあんま読まない」という直感的な鑑賞法。これもまたうらやましい。笑

「せっかく現地に来たんだからここでしか観られない有名作品は逃したくない」「作品背景を知ってじっくり味わわなきゃ」って思っちゃう貧乏性な自分。でも性格は変えられないので笑、自分を受容しつつもっとアートを楽しみたいな~と思っていたところで、『いちばんやさしい美術鑑賞』(青い日記帳)という本に出会ったのでした。

著者は「青い日記帳」というアートブログを書いているTakさん。年に300を超える展覧会に足を運んでいるそう。す、す、すごい……。

どう鑑賞したらいいの?というアート初心者に超オススメの1冊。西洋・日本美術のおさえておきたいポイントがめっちゃ分かりやすく書かれてます。なにより文章からTakさんの旅好きが伝わっていて、同じ旅行好きとして「あ~~~早く旅したいよ~~~」という気持ちになりました。目次はこちら。

西洋美術を観る ──
第1章 聞いたこともない画家の作品を鑑賞する時は
グエルチーノ《ゴリアテの首を持つダヴィデ》(国立西洋美術館)
第2章 フェルメールは何がすごいのか?
フェルメール《聖プラクセディス》(個人蔵、国立西洋美術館に寄託)
第3章 作品の世界に溺れてみよう!
モネ《睡蓮》(DIC川村記念美術館)
第4章 なぜセザンヌは「近代絵画の父」なのか?
セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(ブリヂストン美術館)
第5章 使う場面を想像しながら観る
ガレ《蜻蛉文脚付杯》(サントリー美術館)
第6章 これが名画? はい、そうです!
ピカソ《花売り》(ポーラ美術館)
第7章 美術鑑賞は格闘技だ!
デュシャン《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(東京大学駒場博物館)
日本美術を観る ──
第8章 水墨画を味わうために
雪舟《秋冬山水図》(冬景)(東京国立博物館)
第9章 教科書に出ている狩野派の味わい方
狩野永徳《檜図屏風》(東京国立博物館)
第10章 デザインを語るなら観ておくべし
尾形光琳《燕子花図屏風》(根津美術館)
第11章 「なぜその作品を作ったか」で観る
伊藤若冲《動植綵絵》(三の丸尚蔵館)
第12章 観られない作品ほど観たい
曜変天目(静嘉堂文庫美術館)
第13章 超絶技法に驚く!
並河靖之《藤花菊唐草文飾壺》(清水三年坂美術館)
第14章 女性ならではの美の表現とは?
上村松園《新蛍》(山種美術館)
第15章 同時代のアーティストを応援しよう 
池永康晟《糖菓子店の娘・愛美》(個人蔵)

わたし的には、「なんでセザンヌってすごい画家扱いなんだろう…?あんましピンとこないんだよな…」という長年の疑問に「なぜセザンヌは『近代絵画の父』なのか?」の章でズバッと答えてもらってスッキリしました。セザンヌごめんなさい。笑

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レディ・メイド(既製品)をアートとしたデュシャンの章にいたっては、現代アートで「はて?」と思う作品があったら〝「ぜんぶデュシャンのせいだ」と思うように〟とバッサリ解説されていて笑った。楽しい。わたしもそう言おう。笑

とっつきにくめの日本美術についても、おもしろポイントを絞って紹介してくれます。

伊藤若冲の「動植綵絵」は並んででも全部を観たくなったし(ポストカードもほしい)、なぜか日本に貴重な3作が存在するという曜変天目(静嘉堂文庫美術館)は「なぜ渡来したかも製法も、こんな謎に包まれた作品があるんだ…観てみたい…」となったし。(Takさんの「曜変天目でごはんを食べてみたい」に思わずほっこり)

(曜変天目は↑どうやらこの春に公開予定だったみたい…!今後のチャンスも待ちたいなぁ…)

これを読んでも、きっと美術の入り口の前の玄関の、そのさらに前の庭の扉に立ったぐらいなんだろうけど、やっぱり知れば知るほど面白いなぁと思ったのでした。

ちなみにわたしは原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』を読んで、これはダークツーリズム的にも自分の目でゲルニカを見にいかなければ……!とマドリードを訪れて実物を観たとき、あまりのスケールの大きさに目が点になった。

ほんっとに言葉通りでかい。自分の視野に全部を入れようと思ったらかなり後ろに下がらないといけない。警備スタッフが脚立の上から監視してたのも印象的だった…
小さな頃、教科書で見たゲルニカはほんとにちっぽけで、あの頃「子どもが描いたみたい」とか思ってた自分に「こらーーーっ」と言いにいきたくなった。

最近は日本画もいいなぁって思う機会が増えてきて(動物を描いた橋本関雪さんとか)。

もともとは智積院(京都)で宿坊を体験したとき、宝物の障壁画を見せてもらったことが大きいのかも。

早朝に宝物館に入って、僧侶の解説つきで宝物を見られるのは宿泊者の特権。長谷川等伯の子ども・久蔵の桜図(国宝)が収蔵されているのだけど、電気を消して鑑賞出来る

貝殻からつくられた顔料「胡粉」で彩った桜の花びらが、暗がりにぼんやりと浮かび上がる。まるで夜桜見物。ふだんの開館時に電気を消すわけにいかないので、夜桜を鑑賞できるのはこのときだけ。本当に贅沢な気分になった。

この絵を描いた直後に亡くなった久蔵。等伯は悲しみをこらえながら「楓図」を描き上げる。秀吉はどんな気持ちでこの二つの絵をみていたのかな~。

あぁ、とにかく絵に会いに旅へ行きたくなってきたな……。まずはぽつぽつと開き始めた都内の美術館を巡るところからリスタートしようかな。

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