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対岸の火事とは思えなかったパラサイト アカデミー賞うれしい!

パラサイト、アカデミー賞4冠!!おめでたいー!!

実は受賞の1週間ほど前に見にいって、鑑賞後はずーーーんっとなってたのでした。

韓国で深刻化している「格差」がテーマ。半地下でその日暮らしのキム一家と、高台の豪華な一軒家に住む経営者のパク家が登場する。キム家の長男・ギウが、パク家の家庭教師の代打を頼まれたことで、パク家の「幸せ」を少しずつ〝いただき〟ながら暮らしていく……だけど……というお話。

わたしの英会話の先生は過去に映画を学んでいたアイルランド人なのですが、「アカデミー賞とったね!」と喜んだら「overdue(遅れた/機が熟した)」と言われました。これまでにもっと素晴らしい欧米以外の映画があった、それにもあげるべきだ、と。なるほど…。ただ彼もパラサイト自体には高評価。ポン・ジュノ監督のほかの作品の方が好きみたいだったけど。

★★ここから少しだけストーリーにふれてますので、見ていない方はご注意を★★

印象的だったのが、高台にあるパク家への急勾配の坂道とか、半地下のキム家の前の階段とか、視点が上下に移動するところ
雨が降るシーンでは、キム家へ戻るとき、排水溝を詰まらせる草や汚水がどんどん下へたまっていくように描かれていて、陰鬱な気持ちになった。富のトリクルダウンは起きていない。雨が洗い流してさっぱり、じゃなくて、どんどん澱んでにごっていく。

それと、すごく冷たい表情になって「私は〝度を越す〟人が嫌いなんだ」と言うパク社長も怖かったな……。「奥さんを愛しているんですね」とか、お父さん(ソン・ガンホ)が無意識なのか意識的になのか、ちょいちょいパク社長の痛いところを突いちゃうんだよな……。

ようやく見終わったので、レビューとかインタビューを読むの解禁。そしたらこの二つについて、ポン監督がふれていたのでメモ。

ポン)映画『パラサイト』でも、あのシーンは後半部において重要な意味を持ってきます。同じ雨なのに、お金持ちが住む街と貧しい人が住む街ではまったく違う事態が起きます。そのシークエンスで、人物が高いところから低いところへ、お金持ちの住む街から貧しい人が住む街へと移動するのに、雨も一緒に移動していくんです。
是枝)雨も降りていく…
ポン)人物と水が一緒に下へ下へと移動します。人物と同時に水も、富める者から貧しき者へ向かって流れるのです。その反対は成立しません。そこから来る不安感や閉塞感があります。雨はテーマとして重要なものだったので、あの雨のシークエンスは準備を念入りにしました。

確かにあの雨の量はすごかった…。いくらかかったんだろ……

字幕では「度を越す」だった社長の言葉を、「一線を越えるな」と表現していたのはハフポストのインタビュー。韓国や日本の格差についてもすごく分かりやすくまとめられていた。

「『一線を越えるな』という言葉が、パク社長を表現するキーワード」だとポン監督は説明する。
彼らは見えない線を引いていて、その線を越えた外の世界にはまったく関心を持っていません。たとえ目に見えていたとしても、線の外にいる貧しい人たちのことは、まるで見えていないかのように行動するのです。幽霊のように、いないものとして扱っているんです」
韓国では、経済格差の広がりが社会問題となっている。OECD(経済協力開発機構)の調査では、若年層の失業率は増加傾向にあり、生まれる家の所得によって子どもの人生が左右されることを表す「スプーン階級」という言葉も話題になった。
そうした問題はもちろん韓国に限った話ではない。日本は先進国の中でも相対的貧困率が高く、約6人に1人が貧困状態にある(2017年のOECD調査結果)。非正規雇用と正規雇用の賃金格差が問題視され、女性の社会進出も遅れをとっている。

キム一家、どのタイミングでどんな選択をしていたら、バッドエンドにはならなかったのかなぁ。貧困というそもそものスタートから、選べる「選択肢」は限られてしまっているのだけど…。
本当に対岸の火事とは思えない映画だった……ので、ぜひ元気な時に見ることをオススメします。

いや~しかし何より心に残っているのはソン・ガンホの演技だなぁ。あんなおじさんいそうだし、本当に服が少し「匂う」かのような。
彼の作品で一番好きなのは「タクシー運転手」だったんだけど、これは並んだかもしれない……

「タクシー運転手」は、1980年5月に実際に起きた韓国の反政府蜂起「光州事件」の実話をモチーフにした映画。

こちらも、ぜひ気持ちが元気なときに見てほしい。民主化をいかにして勝ち取ったか、という一端もみえる。「報じる」とは何なのかも考えさせられたな。

いやーしかし韓国映画すごい!!(邦画も頑張ってほしいな………)

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