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「タクシー運転手」「1987」韓国の民主化闘争 映画pickup3

今回のおすすめは韓国映画の「タクシー運転手 約束は海を越えて」と「1987、ある闘いの真実」。

またもや「考えさせられる系」映画をピックアップしてしまった……。「観てほしい!!」って映画って、わたしの場合どうしても、史実に基づいた映画based on a true storyになりがちだ……

韓国語ペラペラな友人が「タクシー運転手→1987の順番で観て!」ってオススメしてくれたので、去年、言われた通りに観ました。それが大正解!

それまで韓国映画をほとんど観たことがなかったんだけど、タクシー運転手の主演ソン・ガンホの演技が素晴らしく(「こんなおじさんいるよな~!」みたいな自然な、そして愛すべき演技……)、そして2作とも、自国で起きた実際の事件を批判的に、でもエンターテイメントとしても成り立つように構成していて唸らされた。歴史の勉強にもなる。

タクシー運転手 約束は海を越えて

「タクシー運転手」は、1980年の光州事件(5.18民主化運動)を描く。5月18日から27日にかけ、光州市を中心に起きた民主化を求める民衆蜂起だ。
20万人がデモに参加したそうだけど、デモと衝突した戒厳軍が住民たちに銃弾を浴びせた。200人以上が死亡・行方不明ともいわれる。
ただ、光州への出入りは制限され、厳しい言論統制があり、ソウル住民でさえ光州で何が起きているのか知らなかった。そんななか、ドイツ人記者ピーターが、タクシー運転手マンソプとともに検問を切り抜け、光州へ入っていく。そこで起きていたことは……?というストーリー。

1987、ある闘いの真実

1987、ある闘いの真実」は、光州事件の7年後。チョン・ドゥファン大統領の軍事政権下では、反政府勢力の活動家や民主化を求める大学生の取り調べを強化していた。
思想犯や北朝鮮のスパイを取り締まる警察の南営洞対共分室では、1987年1月、ソウル大の学生パク・ジョンチョルが過剰な取り調べ中に亡くなってしまう。警察は隠蔽のために火葬を申請するが、異変に気付いた検事が解剖を命じて……というストーリー。

映画をみるまで、二つの事件を恥ずかしながら全然詳しく知らなかった。
「ここで起きていることを世界に伝えてほしい」と外国人記者に願う光州住民。
拷問致死事件を明らかにしようと記者も奔走するが、圧力がかかって止まる輪転機。
2作品には共通するテーマがたくさんある。そしてハラハラドキドキ、時にウルッとさせられるし、単純に映画としても面白い。

1987年ってついこないだのことだ。隣国がどんな風に民主化を勝ち取っていったのか、自由とは、権利とは、報道とは……いろんなことを考えさせられる。日本には関係ないことだろうか? 公文書が改ざんされたり、その作業をさせられた職員が自ら命を絶ったりしている。

実は、パク・ジョンチョルさんが亡くなった南営洞対共分室は、現在「警察庁人権保護センター」として公開されている。

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わたしは今年2月に訪れた。この体験については改めて書こうと思っているけど、あまりに現地の衝撃が大きすぎて、なかなか受け止め切れていない。ただ、人が通り抜けられない5階の窓の細さを目にしただけで、この建物が何を目的につくられたかを象徴しているような気がしてぞっとした。

パク・ジョンチョルさんの取り調べ室は当時のレイアウトのまま残されているそうで、献花もあった。〝取り調べ〟に使われた浴槽を見ると胸が痛んだ。現地で見て思いをはせることで、過去の出来事が目の前に立ち上がってくるかのようだった。
〝影〟の歴史も忘れないよう、この建物を残し、公開しているのは素晴らしいことだと思う
ソウル駅からひと駅の南営駅から歩いてすぐなので、また旅が出来るようになったら訪れてみてほしい。そしてその前に「1987」を観てほしいなぁ。

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