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建築家が自邸をつくるまでーー家ってなんだろう?               

"お客様と建築家のストーリー" 第一回目は、なんと私ミズノの自邸です。
「お客様が建築家のストーリーやんけ」、と言われそうですが一旦置いておいてご一読いただければ幸いです。
今までの中である意味一番難しい仕事でした。

マイホーム建設の背景

34歳まで都内の設計事務所に勤め、10年目で地元の静岡でやってみようと一念発起、家族を連れて地元に戻ってきました。たまたま見つけたアパートに4年ほど住み続けましたが、子供が2人とも大きくなり手狭になったことをきっかけに家をたてようと思い始めました。よくあるきっかけですね。

自邸設計の難しさ

今までに、いくつもの住宅を設計させていただきましたが、その都度のお客様との対話から家づくりをしてきました。ですので1つとして同じような家はありませんし、そこに住むことでお客様がより良い未来となるように努めてきました。

それが自分のことになるとさっぱり・・・・。

おまけに建築家として他に類のない先鋭的なものを設計したいなどという下心がでてきて、いくらスタディしてもしっくりこない状態に。
一旦自分は滅して、「奥様」と「子供たち」だけをお客様と想定して、ヒアリングをしながら設計を、いくつかの案を出しましたが、なかなか合意には至らずしばしば口論になることも(反省)...

たくさんの案を検討

それでもあきらめずに、とにかくたくさんの案をつくっていきました。その数なんと24案。(沢山つくればよいということではないので悪しからず)
設計を始めて2年くらいたった(笑)ころ。中心に中庭を設けた「内」に意識を向ける(逆言えばに外には閉じる)案が、今の自分たちの住まい方に合っているのではないかという何となくの合意が形成されていきました。

沢山の模型を作りながら検討

ターニングポイント

その案をもとに、設計を進めていきましたが、一方で、ほんとうにこれでいいのかという思いを抱き始めました。

そもそも家ってなんだ、家族ってなんだ。

大金で土地を購入して、動かせない箱をつくって定住する。今の時代にこれをやる意味って何だろうって。どこにいても仕事ができるし、マンションだっていい。そもそも家ってなんだろう。家族ってなんだ、という問いについて話し始めて、やっと進んだ気がします。僕たちにとって、その答えは、

ここにいっしょに住むことで、子供も大人も成長できる場所にしたい。だから、今の僕たちに「合っている」家というだけでは物足りない。なりたい自分たちを投影した家がいいのではないか。
そして、家族の成長と共にアップデートし続けられる家がいい。

内向きだった案をひっくり返して考えてみた。
中心を持ちながらも外に意識が向かう家。
中庭だったところに螺旋階段を設け、さらに360度外部に開くことの出来る構造システムを考えた。自分達でアップデートできるように、木の柱や梁は剥き出しにした。

立体ワンルームで拡張しながら自由に暮らす。

四畳半が1つの単位
2730㎜×2730㎜(四畳半)の1グリッドを基本とした平⾯とし、X、Y⽅向にそれぞれ3グリッドずつ、1フロアに9グリッド。その2層分で全18グリッドからなる極めて単純な枠組みに、鉄筋コンクリートと木の構造体をなぞらせています。耐力壁は中央のコンクリート造に負担させて、周りの木造部分は壁が必要ないため、360度開口を設ける設計となりました。

いよいよ着工

地鎮祭の前に敷地に図面を書いて、みんなで広さや動線を確認。これは楽しかったー。マクドナルドをつくった男の映画『ファウンダー』の中で、効率的な厨房をつくるのに原寸の図面を地面に描きながらスタディしていたのをヒントにしました。

施工は地元の阿部工務店さんにお願いしました。
細かな注文に親身になって対応していただき、また新たな挑戦にも積極的に取り組んでいただきました。コンクリートの型枠を波板(トタン)にして波々のコンクリート面をつくってみたり。。。お世話になりました。

結構時間がかかりましたが、お盆前に晴れて竣工!!住み始めて発見することもたくさんあり、その都度話し合いながらアップデートし日々姿を変えています。

家族にインタビュー ー住んでみてどうですかー

妻:日々、いいなと思うことも、改善したいと思うこともたくさん発見します。住んでみてわかることが多いですね。寸法的なこと、プライバシーや日射のこと、物や片付のこと。最近はみんなで課題をクリアすることも楽しみと思っています。

長女:自分がやりたいことができるので嬉しい。よく寝れる(笑)
長男:後で作った3階(DIYで作ったロフト)が秘密基地みたいで楽しい。マイクラみたいで楽しい。

とのことです。

私としては、ディテールがうまくいっていないところとか、計画上ああすればよかったーと言うところはいくつかありますが、好きな空間ができたのではないかと思います。30年後どんな家になっているか楽しみです!

夜中帰ってきて、手を洗いながらこの開口部から星空を見るのが最高の瞬間。


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