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詩『esperance.』

裸の幹が緑の葉を獲り戻し
目の前の空を確かに覆っていく
高く登った太陽が東の窓から入り込み
この世のすべてを優しく照らしていく

私たちが思う以上に世界は 命の鼓動に包まれている
何かが何かを支え合って この大地に立っている

朝の通り雨で出来た小さな水たまり
夕方にはもっと小さくなっていた
いくつもの夜を越えて巡っていく
水は魂の体現者かもしれない

悲しみと喜びが幾度も繰り返し
人は歳を積み重ねていく
老いたくないとは思っているが
無駄な足掻きだともわかってる
過行く季節をこの目で見ながら分かったことは
「永遠」が「理想」でしかないこと

どんなに心が張り裂けそうでも
きょうもどこかで希望が芽吹く
名もないそこらの草花のように
いつしか心を埋め尽くしていく

僕らはそれを「無謀」とも呼ぶし
あるいは「挑戦」とも呼ぶ
それなのに希望は 私たちの目の前に生い茂っていく
希望を捨てることを考えさせないぐらいに
捨ててもなお その逞しさを誇示するかのように

希望とは、まだ抱きしめていたい二文字
そしていつまでも心に咲き続ける花の名前



[了]




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