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日系企業で社員のキャリア自律は実現できるのか

こんにちは、みずのです。

私の所属する企業では、今「社員のキャリア自律」がキーワードになっています。
当社に限らずいろんな企業で議論されているのではないかと思いますが、
先日「人事の組み立て」を読んで、キャリアの自律について少し考えたことがあるので書いてみます。


1.「キャリアの自律」が求められる背景

社会が急速に変化し予測困難な昨今では、いつどんなスキルが会社にとって不要になるかもわからないし、企業が一方的に社員のキャリアを規定し、主導することは厳しくなってくるでしょう。
逆に社員が多様なスキルや経験を持っていることで思わぬイノベーションが生まれたりすることもあるかもしれません。
そう言ったことから、常に社員には貪欲に学ぶ姿勢を持ち自分のキャリアにオーナーシップを持っていて欲しいという経営の思いもわかります。

2.キャリア自律に向けた会社の取り組み

それでは、会社としてはどのように社員のキャリア自律を実現しようとしているのか。
キャリアの相談ができる窓口や、キャリア研修、自分で学べる学習ツールの提供、上司とのキャリアに関する1on1の充実、公募制ホストの拡大等々があげられているのですが、正直なんだかしっくりきません...。「キャリア自律」とは何なのかについて掘り下げられていないままに施策の話になっているからかもしれません。

3.そもそも「キャリア自律」とはどんな状態か?

「キャリア自律」とは一体どんな状態なのでしょうか。私個人としては、どんな職種で経験を積むのか、WLB含めた仕事への距離感の取り方、マネージャーを目指すのかもしくはスペシャリストを目指すのか、等々にについて自分で考えて決断できている状態なのかなと思っています。

4.現状の会社の仕組みで社員の「キャリア自律」は実現できるのか

「キャリア自律」を上記のような状態だと仮定した場合、現状の会社の仕組みだと実現できるのでしょうか。

まず、採用段階からですが新卒の総合職採用では職種が選べません。自分が歩むキャリアがそもそも会社に決められてしまうんですね。一度決まった後は自分で手を挙げない限り職種が変わることはありませんし、中途採用では職種が決まっています。ただ、これに関しては新卒の職種別採用を拡大するなどして多少は対応が進んでいます。

次に大枠の職種が決まった後、具体的にどんな経験を積んでいくかといったところですが、現状だと公募制のポストがわずかにあったり、希望する部署の希望は出すことが出来る場合もありますが、多くの場合結局は異動先は上司、つまりは会社が決定するのですよね。
それに、やはり「キャリアの階段を上り続ける」ことが前提となっていて、一部登らないことを宣言している人もいますが、稀なケースです。
さらには、私は臨床心理士の資格を持っていますが、たとえ人事の中のメンタルヘルス担当になったとしてもプラスで手当てがつくわけでもありません。
これでは結局、社内に自律的なキャリア選択、自発的に学んだ事を生かす余地などほとんどないのでは...と思うのです。

5.「キャリア自律」の実現のためにジョブ型雇用を取り入れる?

「人事の組み立て」の中で著者の海老名氏が、日系企業の今後の雇用のあり方として、一通りの育成の終わったキャリアの中期以降に欧州型雇用を取り入れ、上を目指すトップエクステンションと、WLBを充実させる限定職という2つのルートを設けるといった案を提唱されています。
(限定職の給与は通常より2割ほど減のイメージ)

ここからは私が徒然に考えたことなのですが
限定職のポストを公募制にして、ポストに就くために必要なスキル、ポストの給与もあわせて開示し、必要なスキルを身につけるサポート体制もある程度整えておけば、30代以降どういった働き方をするか自分で選ぶことができ、限定職になるならば何を身につける必要があるか考えた上で自ら習得していくといったように「キャリア自律」が達成されるのではないかということがまず一つ。

また、今後は定年が65歳となりシニア社員の活用といったテーマも重要となってくるかと思います。もちろん豊富な経験を生かして活躍されている方々もいる一方、十分な活用ができておらず、本人や周囲のモチベーション・パフォーマンスが低下するような事例が多々あるのも事実。このような限定職を設けておき、非管理職の場合はある一定の年齢以降、限定職の方が待遇が良いなどのような設計が出来るとすれば、キャリアの中盤以降の自身の身の振り方を考えてスキルを磨いていく層が少しでも出てくるのではないかなということが二つ目。

とは言いつつ、いずれにしても自社に置き換えた時にどのようなポストを限定職にするのかがあまり想像できないというのと、限定職に誘導するような待遇の変更は段階的にしかでき無さそうなので変革にはかなり時間がかかるだろうなとも思っています。

ただ、本来的には「キャリア自律」とは、現在所属している社内にとどまらずキャリアの道を検討することだと思うのですが、社内の中の選択肢が増えることは会社にとっても社員にとっても良いことではないでしょうか。

6.若手社員のキャリア観に関して(おまけ)

これは自社内で自分が得た情報によるところでしかないのですが、自社の若手社員は社内でのキャリアの道や選択肢が見えない、情報が少ないということについて不安や不満を持っているケースが多いようです。キャリアに関する意識は中高年層と比較して相対的に高そうですね。転職も一般的になってきている世代ですし、自分自身もそうですが「終身雇用前提ではいけない」「市場価値を上げろ」といったフレーズをあちこちで耳にしてきたはずです。
この、キャリアへの意識の高さは共通していても、実際の「キャリア自律」を望んでいる層もいれば、ただ社内のキャリアパスを見える化して安心(?)したいといった層がいそうだということに社内のヒアリング結果などを通して気付きました。キャリアの話題や若手社員の離職問題の中で、一括りに若者のキャリア観とまとめられがちですが、もう少し丁寧に見ていった方がいいのかもしれないなと感じています。

気付けばかなり長くなってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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