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赤いコートを着てパリに行ったことを後悔した日

2023年3月。
1週間ほどフランスのパリに旅行に行ってきました。
フランスを選んだ理由は一つ。
「フランスに暮らす人達と話がしてみたかったから」

フランス人は、どうやら未来を楽しみに生きているらしい

そんな話を耳にしました。
日本にいると今後社会がどうなっていくのか?とか老後二千万円問題とか少子高齢化とか健康不安とか…何かと暗いイメージの付きまとう「未来」に対してフランス人はどう捉えているのか。いったいぜんたいどんなメンタリティでフランスの人々が暮らしているのか聞いてみたくて堪らなくなったのです。

LOCOTABIというサービスを利用してパリ在住の日本人女性3名にアポを取り、お会いしておしゃべりして来ました!

3人の方々や、A子さんのフランス人のご主人にもお会いしてお聞きした内容を元に、日本と比較して考えた事をまとめました。あくまでも個人の方々にお聞きした主観的ご意見やお話なので、その点はご了解いただければと思います!




フランス人は未来を楽しみにしている


フランスに到着して空港からバスでパリに移動すると、早速A子さんとお会いしてランチをご一緒してきました。穏やかでにこやかな方で、人目お会いした時から初めて会ったとは思えないぐらいすぐ打ち解けられました。

A子さんとは昼間っからワインを飲みながら(せっかくパリに来たからにはね)、フランスでの生活について、またフランスの人達の生き方や価値観についてお話を聞きました。

美味しかったー。


その翌日もA子さんとフランス人のご主人とお会いして、美味しいパンを食べながらカフェでモーニング。

そしてその日の夕飯はB子さんとお会いしてレストランに。翌日のモーニングは、可愛いカフェでC子さんとお会いしてそれぞれお喋りしてきました。4人から聞き取りしたフランス人てどんな感じ?をまとめたものが以下の通りです!

●老後はあらゆるものから自由になり、自分の好きな事をして過ごせる時間として捉えている
●お年寄りは角が取れて丸くなるので性格が良いというイメージがある
●女性はワインと同様に成熟するほど素晴らしくなるというイメージがあり、若いほど良いとは思われていない。何才になっても女性として扱われるし、女性自身も若見せしようとせず、1人の成熟した人間として見られたがる。
●友達でも年齢は聞かないし、「何月生まれ」と同じぐらいどうでもいい情報と捉えている。よって自分の年齢も気にしないし「何才だからこうしなきゃ」という発想がない。
●社会保障制度が手厚いので、もし失業したり病気や障害を負っても生活していける安心感がある。
●政治や社会問題に関心が高く、自分たちで変えていけると思っている。不満があればすぐデモやストライキをして行動に訴える。

(今回の滞在中も定年年齢引き上げに反対してごみ収集業者がストを行っていて、街のゴミ捨て場にゴミが溢れていました。ゴミが溢れるのは困るけど「スト頑張れーって感じ」だそうです笑)


このような状況から考えても、「確かにフランス人が未来を楽しみにしているというのは言えると思う」との事でした。

また、未来が楽しみなのには他にも理由があります。



自分らしく生きる、が当たり前すぎる国


もう一つ、フランスにいく前に耳にしていたのは「自分らしく生きるという事はフランス人にとっては当たり前すぎて、フランス語に翻訳出来ない」という事。まじか…と思い気になっていたので、それについても聞いてみました!

●子供の頃から親に誉めそやされて育つので、自己肯定感が高い
●下手くそな絵しか描けない人でも「私はアーティスト」と胸を張る(マジか…と思うレベルだけど、そういうとこもなんか可愛い、だそうです笑)
●常に自分の意見を主張する。でもあくまでも「私はこう思う」なので、マウントを取るわけでも、共感を求めているわけでも、同じ考えを強要するわけでも、相手を論破するのが目的でもない。みんな違う人間だから意見が違って当たり前。違う意見を言われても「自分が否定された」とは捉えない。議論を楽しむので、散々言い合いしても仲が悪くなるわけではなく「意見を伝えられた」「解決出来た」と捉えるのでケロッと元の仲に戻る。話まとまらない事も多いけど別にOKらしい。
●こうあるべき、これはすべきでない、これが常識、なんて絶対に言わない。
●人にどう見られるかを気にしない。
●自分を着飾ることをしない。意外とシンプルで色物をあまり着ない。とりあえず黒が好きらしい。オシャレな人はシンプルで質のいいものを好む。ファッションの流行がない。

パリっ子に負けるもんか!と謎の対抗意識を燃やして、フランスに行く際に赤いチェック柄のコートを張り切って着て行ったのですが、予想外にみんな地味で、パリの街中で完全に浮いていました。観光客である事が丸わかりだ…と後悔したものです…。スリに狙われやすくなっちゃうからね。
(でも寒いから脱げない)

そしてお聞きしたところやはり「自分らしく生きる」に該当するフランス語は無いなあ…、との事でした。それぐらい割と当たり前の事なんですね。

エッフェル塔も一応見ました!


「空気を読む」「気を遣う」


可愛いカフェでモーニングをご一緒してもらったC子さん。大きな瞳でよく笑う明るくてすごく可愛い子だったのですが、C子さんがこんな事を言っていました。

「フランス人の彼に、つい日本にいた時の癖で、行動を先回りして色々やってあげた事があったんです。顔を洗ってたらタオルを渡してあげる。グラスが空いたら飲み物を注いであげる…みたいな。そしたらある日、『監視されてるみたいだし心を読まれてるみたいで気持ち悪いからやめて』って言われました。」

日本流のおもてなしはここでは通用しないんですよね、とC子さん。

やって欲しい事はやって欲しいと言う。それ以外の気を遣った先回りの親切は、ただの余計なお世話になってしまう、んだそうです。

空気を読む、気を遣うという独特の概念はやはりフランス語には翻訳出来なさそうです。

モン・サン・ミシェルも行ったよ!


日本における「自己責任論」の内面化

上手くいかないのは自分のせい

フランスで色々お話を聞いてきて、改めて日本で感じるそこはかとない不安感や息苦しさは何が原因なんだろう?と考えてみました。普段コーチングを通して沢山の人の話を聴いていますが、能力が高かったり仕事や生活環境をきちんと確立出来ていても、自己肯定感が低かったり他人からの評価を気にして苦しい思いをしている人があまりに多いように感じるからです。

そして行きついたものが「自己責任論」でした。

20年程前から、新自由主義の台頭とともに日本人は自己責任論を内面化させて来ました。あらゆる状況の責任が個人に負わされ、上手くいかないのは努力が足りないせいと捉えられる。「甘えるな」「頑張れ」の社会。弱さを持つ事は恥ずかしい事。自由にありのままの自分を出してはいけない、ちゃんとしないといけない、人に迷惑をかけてはいけないというある種の強迫観念。“ちゃんとする”為に、ああすべき・こうあるべきのルールを常に意識していないといけない。


あなたが上手くいかないのはあなたのせい

また、人間というものは自分が自分を見ているのと同じように他者や世界を見ます。(心理学でいう“投影”です)

自分自身に対して無意識であれ「甘えるな」「努力しろ」という声がけをする人は、他者に対しても同様の目で見ています。自分責めをする人は、他人責めもします。

貧困も格差も精神的苦しみも「あなた自身のせい」「努力が足りないせい」と見られ、社会的弱者に対しても同情的な感情というよりは努力不足や怠慢や甘えで社会に迷惑をかける存在として捉えられているように見えます。

その視線がさらに再び自分の中で内面化され、「上手くいかないのは自分のせい」と捉えていく循環が生まれる。こうなると、思うように行かなくなった時に自分の尊厳を守れず、自分を大切に思えない状態に追い込まれていきます。

こういった状態はまた、不満があったり生活が苦しくてもフランスなど諸外国のようにデモやストライキ、暴動に訴えるのではなく、それぞれの個人が自分を追い込み個人的な努力を続ける循環を生んでいきます。


人は大きなものの中で生きている


こう考えた時に、そんな空気感の中で生きていたらそりゃ他人の目を気にしたり他者評価を気にしてしまってもしょうがないよなー!!と思うんです。しかも他者評価は絶対的基準があるわけでもなく、目に見えず曖昧で、常に移り変わっていくもの。気を抜く暇はないですよね。

その上で思うのは、すべての人は“大きなもの”の中で生きているという事。すべてのものが繋がり、循環する網の目の中で生きているという事です。社会構造や政治、時代、文化、慣習、或いは家族環境や遺伝といった大きなものの影響から逃れる事は誰も出来ません。

今がどういう状況であれ、「すべてが自分のせい」と思うこと自体が逆におこがましい。

すべてがあなたのせい、な訳がないのです。

人が主体的に前向きに生きていくにあたって、自分がコントロール出来ないもの(他者の気持ちや他者評価)をどうにかしようとせずに、自分がコントロール出来るもの(自分の思考や行動)に集中して生きていく、自責や自分軸の考え方は必要なものだと思います。ただそれと自己責任論を混同して、必要以上に「自分のせい」と自分自身を追い込んで生きていくことは、心の健康を損ない、他者評価を気にしすぎて自分が心から望む在り方で自由に生きる事を妨げてしまいます。

シャンゼリゼ通りのルイヴィトンの建物に草間彌生が…!!(左上)


だからこそ、出来ること


そうした状況を踏まえた上でおすすめしたいのは、「自分がなぜここにキャスティングされたのか」を考えるという事です。

今、この時代の日本という国に、自分としてキャスティングされた事にどんな意味があるのか。確かに生きづらさを感じる事はあると思いますが、だからこそ理解出来る人の心の機微だったり、だからこそ培われてきた知恵や優しさがあるはずです。

人の痛みの裏には、必ず願いが生まれます。

自由や個性を制限されて生きてきた人には、自由にあるがまま生きられる世界を求める強い願いが生まれます。十分な愛を得られずに生きてきた人には、愛し愛されて満ち足りた世界を希求する強い情熱が生まれます。そういった各個人の願いや情熱が、世界を変えるエネルギーとなっていきます。

私ももしフランスに生まれていたら、コーチングをやろうとは思っていなかった気がしています。

自分の素晴らしさに自信をもち、今という時の豊かさを味わい、未来を楽しみに生きられる人を増やすこと。それが、私が私としてこの場所に生まれた事の意味だと、今は感じています。


フランスからの帰りにベトナムも立ち寄ってきました。楽しかった!


余談ですが、A子さん・B子さん・C子さんに「フランスの嫌なとこ」も聞いてきました。

●滞在許可書とかの公的書類の処理が異常に遅い
●古い建物をちまちまメンテナンスしながら使っているから、急に水出なくなったりするのが不便(あとコンビニないの不便)
●フランス人は個人主義で協調性ないのでたまにイラっとする

だ、そうです。

私から見たフランスの人達は、にこっと笑って親切にしてくれるチャーミングな人が多いなー、という印象でした!好き!

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