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密やかな時間(詩)

千鳥ヶ淵緑道を歩く。木々に被われた土の上を歩くと、地面が少し縮んでいく。木々の幹からは新緑が勢いよく伸びる。

草の中に蚊柱のような小虫の集団がところどころに現れ、モンシロチョウが花のまわりを飛び回り、葉の上で休んでいる。
世界には人間よりも虫のほうが多いことに気づかされる。

白や黄色、紫に赤い花。草むらの中の自然のイルミネーションが目を喜ばせる。
涼しい風が吹き、葉を揺らす。散歩日和。

一週間前も通った道。見た目は変わらないようで、季節は着実に時を刻む。緑の色も濃くなり、真夏までの時間を心待ちにしているようだ。

見えない風が吹いて、見えない時間が通り過ぎていく。
密やかな風が吹いて、密やかに時間が通り過ぎていく。

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