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トンニャン過去編

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「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編の原作・1970年代にレポート用紙に書きなぐったものを2006年頃にデータ化しました。
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トンニャン過去編#1プロローグ(はじまり)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 いつの頃だろう。それはまだ、この大宇宙が生まれたばかりの頃かもしれない。 いや・・・それより以前、気の遠くなるほどの昔に、トンニャンは いた!! “わたしはトンニャン”  気がつくと彼(彼女)はそうつぶやいていた。いったいここがどこで、何故ここにいて、自分が何

トンニャン過去編#2 クック

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 幾千億の時を経て、地球に二本足で歩く人間という生物が現れた。彼らはいつしか他の生物の上に君臨し、独自の国家を築いていった。 彼らは一様に火を吹く山を恐れ、その山に若い命を捧げる事で、怒りを鎮めようと考える者達もいた。また、その山に炎に包まれた鳥がいると考える者も

トンニャン過去編3 クック

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 どうしてこんな事ができたのだろう。ずっとオーラを想い続けてきたのは、クックの方ではなかったか。 しかし、クックの足は吸い寄せられるように動いていた。泉に向かって・・・。 泉に着くとクックは顔を突っ込んで水を飲んだ。そして顔を上げると頭を震わせて濡れた髪の水気

トンニャン過去編#4 クック

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 少女はオーラを促して自ら籠に乗り込むと、若者達に担がれて山に向かった。その後を様々な供物を持つ人々が後に続いた。 少女の姿が見えなくなると、村人は皆、家に戻っていった。 広場には呆然と立ち尽くすクックがいた。 「クック」 名前を呼ばれて、クックは我に帰っ

トンニャン過去編#5エピローグ(最後)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 宇宙の各所で爆発が起こり、灰と塵が舞う中、トンニャンは今にも消えそうに薄くなっていくアシュラを腕にかかえていた。 すでにアシュラの重さはほとんどなく、意識はとうになくなっている。 「ほら、アシュラ。宇宙が消えていくよ。もう、善も悪も無い」 何度、この光景を見

トンニャン過去編#6 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 トンニャン トンニャン 不思議なトンニャン あなたはいったい誰? トンニャン トンニャン 不思議なトンニャン あなたはいったい何処? それは夏の昼下がりだった 一九七一年夏

トンニャン過去編#7 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 「やっぱり外で立って食べるアイスクリームはおいしいわ」 ネッドは私をチラッと見ると笑いを浮かべた。 「アン、口のまわりが真っ白だぞ」 「あら、ネッドだって。あ・・ん、これってやわらかすぎ。すぐとけちゃうわ」 「アンに食べられたくなくて、逃げてるんじゃないか?」

トンニャン過去編#8 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 「アンも濡れちゃったね。」 「平気。すぐ乾くわ。」 私は肩で息をしながら、噴水から出た。 「ネッドも出なさいよ。風邪ひくわよ。」 振り向いた私の眼にネッドの姿が歪んで見えた。いや、違う。歪んでるのはネッドじゃない。く・う・か・ん? 噴水の水が滝のように噴きあ

トンニャン過去編#9 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 「アン・バスカント、離れてなさい」 炎はいつのまにかひとりの少女になっていた。 彼女は、私とそう年が変わらないように見えた。 「どうして私を知っているの?」 「私に知らない事はないのよ」 彼女は流暢なイングリッシュイングリッシュを話していたが、その姿は結い上げ

トンニャン過去編#10 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 悪魔がネッドのいる水の塊に手をかざすと、ネッドが苦しみだした。 ネッド!! トンニャンが両手を水の塊に向けた。 そしてそれを抱えるような仕草をした。 するとどうだろう。 水の塊がゆっくりとトンニャンに近づいてきた。 トンニャンが水の塊を両手に受け取ると、風船

トンニャン過去編#11 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 一九七二年春~夏 イギリス・ロンドン近郊 ボソボソ・・・ささやく声。トム・クワイエットはベッドで眠っている少女を見つめていた。トムの両親とドクター・グレゴリーが話している。 「あ・・・」 トムが小さく声を上げると、皆がいっせいに少女を見る。少女はピクリと身体

トンニャン過去編#12 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 「トム。昨日トムの家に、行き倒れの人が担ぎこまれたんだって?」 セカンダリースクール二年生は今日で終わり。明日から夏休みになり、夏休み明けにはセカンダリースクールの三年生だ。 トムは毎日スクールバスでセカンダリースクールに通っている。 トーニ・バロンとは、同じ

トンニャン過去編#13 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 その夜、また父からコーラの話があった。 「ドクター・グレゴリーの話だと、コーラの身体はほとんど回復した状態だそうだ。明日からは少しずつ起きている時間を増やしていこう」 「そうね、家族になったんだから、家の事も覚えてもらいたいしね」 「かあさん、こき使うつもりじ

トンニャン過去編#14 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。 キラキラと輝く太陽に照らされて、コーラは小麦色に肌をこがしていた。ブルーに濡れた肌が波間に光る。 トムは少し離れて、トーニと泳ぐコーラを見ている。 コーラが来てから毎日一緒にいて、寝る前に必ずコーラの部屋で話をする。 今までトーニしか見えなかったトムには、こんな