見出し画像

トンニャン過去編#14 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

キラキラと輝く太陽に照らされて、コーラは小麦色に肌をこがしていた。ブルーに濡れた肌が波間に光る。
トムは少し離れて、トーニと泳ぐコーラを見ている。
コーラが来てから毎日一緒にいて、寝る前に必ずコーラの部屋で話をする。
今までトーニしか見えなかったトムには、こんなに近くにトーニ以外の女の子がいるのは初めての体験だ。

トムはフーッと息をついた。
黒い短い髪、黒い眼、トムと同じくらいの年に見えるコーラ。
でも、毎日話す彼女は、トムよりずっと大人びて、コーラの言葉にいちいち納得し、考えさせられる。
彼女の話す記憶の断片は、不思議な物語もあり、聞いた事もない話に驚きを隠せない。
もっと早くコーラに会いたかった。トーニと約束する前に。

 
「トム、コーラとトーニは?」
母に声をかけられて、トムは我に帰った。
「え?いないの?」
トムは立ち上がった。父も心配して海を見ている。
「さっきまで、近くで泳いでいたと思ったんだけど・・・」

コーラとトーニは、トムが物思いにふけっている間に、どこかに消えてしまった。
両親としばらく探したが見つからず、父は沿岸警備に連絡して捜索願を出した。
だが夜になっても二人は見つからず、トーニの両親も呼ばれて、ひとまず海岸近くのホテルに泊まる事になった。
 
 
まんじりともしない夜が明けて、トムは朝の海岸を歩いていた。二人は溺れてしまったのか。
「もう、死んでるんじゃ・・・?」
その時トムの耳元にささやくような声が聞こえた。
「トム・・・」
誰だ?
「トム・・・」
もう一度。トムは周りを見回した。誰もいない。

 
突然目の前の波が大きく揺れ、人が顔を出した。
「コーラ!」
コーラが海から現れ、トーニを肩にかかえて支えていた。
「トム、トーニが大変なの」
 
トーニはすぐ病院に搬送された。
一晩中トーニを支えて泳いでいたというコーラは、疲れた様子もなく元気だった。 
 
「コーラ、聞きたい事がある」
トーニは退院したが、家で養生している。トムはいつものようにコーラの部屋で話していた。
「海で、一晩中泳いでたって言ったよね?その時の事、詳しく聞きたいんだ」

「・・・警察でも聞かれたんだけど。
私達泳いでいるうちに陸が見えない所まで来てしまったの。で、救助が来るまで疲れないように浮いていようって話したの。
ところが夜になってトーニが突然沈んでいって、私はもぐって支えながら浮いてたんだけど、そのうち気が遠くなって・・・。
気がついたら、トムの前に立ってたの」
「何だよ、それ。おかしいじゃないか」
「・・・そう言われても、よく覚えていないのよ」
 
トムは一度コーラの部屋を出て自分の部屋のベッドに身を横たえた。眠れない。
トムはしばらくして、もう一度コーラの部屋に行ってみた。
「コーラ、もう眠ってる?」
返事はない。トムが思い切ってドアを開けると、開け放された窓にカーテンが風に揺れていた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

ンニャン過去編#14 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)


電子書籍 ¥528 AmazonKindle Unlimitedなら無料
紙の書籍は¥660

全国配本書店名はこちら(当初の110店舗に、追加書店も記載あり)
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 

#15へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n96c8a467eee0

#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)