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トンニャン過去編#13 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

その夜、また父からコーラの話があった。
「ドクター・グレゴリーの話だと、コーラの身体はほとんど回復した状態だそうだ。明日からは少しずつ起きている時間を増やしていこう」

「そうね、家族になったんだから、家の事も覚えてもらいたいしね」
「かあさん、こき使うつもりじゃないよね?」
「まぁトムったら。ちゃんとコーラの身体を考えるわよ。
それより夏休みだし、元気になったらトーニと一緒にコーラも遊びに連れて行ってあげなさい。ドクターによると、記憶喪失になるほどのショックを受けながら、驚くべき回復力らしいから、きっとすぐ元気になるわ」
 
 
グレゴリーの言葉通り、翌日からコーラは起き上がり、トムの母の家事の手伝いを始めた。トーニは毎日遊びに来て、コーラと一緒に母の手伝いをしたり、祖父母や母やトムも含めてティータイムにはおしゃべりしたり、いつも間にかトムより仲良くなっているように見えた。

 
「トム、今日のクッキーはコーラとトーニが作ったのよ。」
「え?かあさんが手伝ったんでしょ?」
「いつもは一緒に作るんだけど、今日は二人にまかせてみたの」
コーラもトーニもニコニコしている。

「・・・大丈夫かな?」
「トム、それどういう意味?」
「トーニ、食べてもらえばわかるわ。私達、毎日お手伝いしてるうちに、ずい分上手になったと思うもの」

「そうよね、コーラ。食べたくない人には食べてもらわなくてもいいわ。」
「べ・・・別に食べない、とは言ってないよ」
トムは椅子に座ってクッキーを一口かじった。
「あれ?おいしい」
コーラとトーニが、手を取り合って飛び上がる。
・・・女って単純。

 
「ね、トム、今日のティータイムの時、私とトーニのクッキー、ほんとはちょっと甘かったでしょ?」
コーラの部屋でトムは一緒に星を見ている。
「私達が二人で喜んだ時、女って単純って思ったわよね?」
「・・・え?なんで?」

「図星ね。恋する乙女には、好きな人の言葉は全部魔法の言葉なのよ。
トーニは本当にトムが好きなんだわ。大事にしなさいよ」
コーラがポンとトムの肩を叩いた。
「・・・言われたくないよ」
「え?」
「コーラに僕達のこと、言われたくない。」
「あ・・・ごめんなさい。余計な事だったわね。二人が幼なじみってだけじゃない事、トーニから聞いてたものだから」

 
「それに、トムも、この家の人達も、私の事を家族みたいに扱ってくれてるから、甘えちゃって、つい・・・」
「違う。そういう意味じゃない。コーラ、その・・・」
トムは何か言いかけて口ごもった。

「あの・・・あのさ、海に行ってみないか?毎日暑いし、とうさんが休みの日でも、トーニも誘ってさ」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#13 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」


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#14へ続く
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#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

 


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