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トンニャン過去編#9 アン・バスカント(原題「鳳凰」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「アン・バスカント、離れてなさい」
炎はいつのまにかひとりの少女になっていた。
彼女は、私とそう年が変わらないように見えた。

「どうして私を知っているの?」
「私に知らない事はないのよ」
彼女は流暢なイングリッシュイングリッシュを話していたが、その姿は結い上げられた黒髪に真っ赤なチャイナドレスを着て、本やテレビで見たチャイニーズかジャパニーズに見えた。
「あなたは誰?」
 
「トンニャン」
 
彼女はひと言そう言うと、空を見上げた。
「え?トン・・・ニャン?」
「アン、早く離れて!」

彼女・・・トンニャンが私に手の平を向けると、私はポンと広場の隅の木まで飛ばされた。
その木の陰に身を隠すようにして、私は噴水の前に立つトンニャンを盗み見た。
私の位置からトンニャンの横顔が見える。
 
トンニャンの見上げる空の空間の割れ目は、つい先ほどよりずっと大きくなっていた。
何が起きる?

割れ目の向こうにたくさんの点々が見えた。
そしてその点々は少しずつ大きくなって迫ってくる。
それらの点の一つ一つが、やがて形となって眼に飛び込んできた。

何?怪獣?悪魔?

それらは見たこともない不気味な姿をしており、絵で見た怪獣や悪魔のおどろおどろしい姿に似ていた。
 
トンニャンは両手を空に向かって広げた。
恐ろしい悪魔達の群れが、今まさに割れ目から飛び出す。
この地上を覆いつくすほどのたくさんの数の悪魔の群れが、その後ろに続々続いていた。

この世の終わり・・・。
私がそう思った瞬間、先頭の悪魔が割れ目から顔を出した。
その時彼らの前に大きな炎が現れ、先頭から後ろの割れ目の奥に向かって火柱が走った。
その火柱は恐ろしい悪魔達を根こそぎ焼き尽すかに見えた。
 
「トンニャン、これを見ろ」
身体を半分炎に包まれた悪魔のひとりが噴水の上の空間を指差した。
ネッド!!
それは空中に浮く水の塊であり、その中にはネッドが気を失っているのか、身体をまるめて捕らわれていた。
 
「さあ、炎を消せ。この人間を殺すぞ」
トンニャンは微笑んだ。
「おまえは誰だ?」
悪魔は言われたことがわからないのか、戸惑っている。

「私が何か、おまえは本当にわかっているのか?」
「ト・・・トンニャンだろう?見れば、わかる。俺は・・・」
「おまえなど知らない。
名前を覚える必要もない者が、私の名を気安く呼ぶな」

「ほ・・・本当に殺すぞ」
「やってみるがいい。」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#9 アン・バスカント(原題「鳳凰」)


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