女性の地位向上のために立ち向かう。ウォール街に設置された銅像、フィアレスガール【PR研究所057】

 高層ビルが立ち並ぶアメリカの金融街に突如置かれた「少女の銅像」。名前をフィアレスガール(=恐れを知らない少女)と言います。

 この銅像は、投資会社SSGAが運用する、女性役員の比率が高い企業限定の投資信託ブランド「SHE」のキャンペーンでした。

 アメリカの権威的な象徴として有名な「雄牛の銅像」チャージングブルに対して立ち向かうように「少女の銅像」は設置されました。

 3月8日の国際女性デーに合わせて、アメリカの金融が集まるウォール街へ置かれたこの「少女の銅像」は、いち企業のキャンペーンを超え、女性役員の比率等に関する大きな議論をアメリカで巻き起こしました。

 もともと金融業界は女性役員が少ないことが大きな課題になっていました。また、金融業界だけでなくたくさんの業界で男女の雇用関係はギャップができているという現状があります。

 (ちなみに世界経済フォーラムによると、日本のジェンダーギャップ指数は153カ国中121位。かなりの後進国であることがわかります。)

画像1

内閣府 男女共同参画局HPより)

 さて、そんな現状に対して問題提起をした投資会社SSGAですが、「少女の銅像」を通して、投資信託ブランド「SHE」のスタンスを明確にしています。

 アメリカの権威的で資本主義の省庁のような存在、「雄牛の銅像」チャージングブルに対して立ち向かうようなスタンスをそのまま表しています。

 「少女の銅像」は、たくさんの人を巻き込む形となり、SNSで一緒に写真をポストしたり意見を述べたりと大きな社会現象になりました。

 2.8万人が銅像の永久設置を求める署名に参加し、「SHE」の取引量が374%もUPしたそうです。

 またこの「少女の銅像」フィアレスガールは同年のカンヌも受賞しました。Huffpostによると、カンヌは「株価指数が374%も増加したことを評価した」そうで、「表現面での評価に加えて、数字的な効果も重要視されている」と分析します。

 実績がちゃんとついてきてることをカンヌが評価するのは、個人的にとってもいいことだと思います、、!!

 PRの事例として注目すべき点は主に2つあります。
 1つ目は、細かいところまで考えられたストーリー性です。「雄牛の銅像」は昔からアメリカ人の脳裏に浮かぶ象徴であり、そんな存在に立ち向かうべく「少女の銅像」が置かれるというきれいなストーリーができています。また、銅像ということで写真をリアルでとり、自分もそのストーリーに参加するというところまでできています。

 2つ目は、社会課題へ切り込むPRと"本業"が一致している点です。企業の"サブ"的なキャンペーンではなく、「SHE」という"本業"と一貫して取り組んでいることがこの一連のキャンペーンをより効果的にしている一つの要因だと考えます。

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