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プリンセスと朝食を


駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#日記」です。

弟家族のうちに泊まらせてもらった朝。
「なんでべみんちゃんいないのぉ?まだ起きてないのかなあ、ねぼすけねぼすけー」
階下からと4歳の姪の元気な声が聞こえた。
わざと聞こえるように言ってるな。
ねぼすけとは失礼な。まだ7時ですよ。でもあなた無駄に6時から起きてましたものね。
しかし朝食みんなで揃って食べたいよね。それは理解する。洗い古したざらざらのタオルケットがまだ恋しいが、重い体を引きづりダイニングへ。

ぱっとしないサラリーマンの弟が頑張って20代でローンを組んで建てた戸建ては、普通のファミリー向けのものだが、義妹のこまめな手入れによって、小さな子供が2人もいるとは思えない程10年経った今でもこぎれいに保たれていた。
カウンターキッチンごしに4人掛けのダイニングテーブルがある。
子供用のイスと大人用のイスが斜向かいに並んでいた。
いつもは単身赴任中の弟の席だという大人用のイスに座らせてもらった。
「パパの席座っていい?」
一応聞くと 
「うんいいよー」
と生返事。 
家族の仲間に入れてくれるようだ。よかった。

姪はにこにこ微笑んでくれた。
大好きなピンクの桃を食べてごきげんなのだ。
ピンクが大好きなんだと。
4歳の女の子って結局ピンクが好きなもんなんか。(ジェンダー…!)
いや待てよ、そういや弟も幼い頃ピンクが好きだった。ピンクの薄汚いうさぎのぬいぐるみをピンクちゃんと名付け相棒にしていたのを思い出した。
ピンク好きは弟譲りか。
にしてもだ。
朝からサイズの合っていないティアラ風カチューシャをして、でっかいダイヤのイミテーションのついたネックレスとおそろいの指輪ですっかりおめかし。全部ファミレスで無料でもらえるやつ。よれよれのいちご柄のパジャマとボサボサ頭に合わせて抜け感を出すというおしゃれ上級者である。プリンセス顔負けよ。

なんて言ってるうちにサラダボウルいっぱいの桃を平らげた姫はさっと自分の口とテーブルを母親から手渡されたウェットティッシュで拭いた。こうゆうところは母親譲りだ。

今度はソファに移動して、
「ねぇねぇこっち来て絵本よんでー」
と私に要求した。
しまった、半年ぶりに見るこの小さな生き物にすっかり見とれてしまい、つい咀嚼を忘れていた。
久しぶりに食べるこんがり焼けたトーストを大急ぎで飲み込むと、姪に寄り添った。

持っていた絵本は「ねむりひめ」である。やっぱ姫さんもんなんかい。…まあいいけど。読み聞かせなんてほぼやったことないからゆっくりゆっくり音読した。それでもいっぱい読み間違えてたけど、姪もいまいちまだひらがな分からないから、モウマンタイ。
こんな話だったっけ、なんて思いながら声に出して読み進めた。
挿絵が鮮やかですごく美しい。
最後のページの王子様との結婚式で皆に祝福されている眠り姫は最高に幸せそう。
めでたしめでたし。
「わたしもドレス着たいなー」
うっとりする姪。
でしょうね。

ところがどっこい私はシャルル•ペローの原作を思い出してしまったよ。100年粘って最高にステキな結婚をした眠り姫が、そのあとかわいい我が子もろとも姑に喰われそうになったり殺されそうになったり散々な目に遭うという味わい深い展開を。

でもこの子がそれを知るのはもう少しでいいか。まだまだみんなのかわいい姫だもの。

文:べみん
編集:アカ ヨシロウ

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