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春を終えて。

春は好きで、春はきらいだ。

春真っ盛りの京都。
浴びるように桜を見た。

源義経が奥州へ旅立つ前に立ち寄ったとされる首途八幡宮。こぢんまりしていても桃が咲いていて、境内に書道教室があって、すぐ隣に公園があって桜があって、地元の人がお花見をしていて。
穏やかな空気の流れる、とても心地いい場所だった。

夏にモンゴルに旅立つ親友が無事に行って帰ってこられるように、その門出を祈願した。
「一生分の桜を見た気がする。」
彼女はそう言って舞う花びらの中で笑った。


職場の先輩2人と3年ぶりの居酒屋。
奥さんと別れたこと、今年度で辞めようと思っていること、それぞれの近況を聞いた。
心がきゅっとなって、枝豆が喉につっかえた。
だんだん人数が減って、今回は3人だったけど、「ここ前にも来たよね。」「花火大会行ったよね、今年はあるかな、行きたいね。」
そんな他愛もないことを言い合える関係が続いている。楽しくて楽しくて、「時間が止まればいいのに」なんてことを本気で思った。
「えらくなっても、仲良くしようね」
冗談めかしてそんな未来の話もした。



高校時代のともだちたちと、数年ぶりに集まった。
あの頃から変わらない漫才みたいなやり取りにゲラゲラ笑った。
写真映えしそうなクリームソーダを誰が注文するかで、じゃんけんした。
「高校生のノリじゃん」
もういい大人なのにね。でも、嬉しいね。
バカなこと言える場所、だいじ。



職場の大切な人が空へ旅立った。
大きくて温かくて豪快で、サンタクロースみたいな人。
訃報を聞いてから、その人に出会ってからの7年間を何度も振り返った。
大学生の頃からお世話になった。
下っ端の自分にもよく声をかけてくれた。
下の名前で呼んでくれて、内線で苗字を名乗ると「誰?」って言われた。
みんな、大好きだった。
今日、火葬場で見上げた空は雲ひとつない五月晴れで、そんな空を見ていたら「あぁ、今の職場で働けて本当によかった」ってふと思った。
私たちは大きな柱を失ったけど、みんなで支えれば、まだどうにか立っていられる。
私が生まれる前から働いてる先輩の涙を見て、そんなことを思った。


春は好きだ。
毎日少しずつ上がる気温に、きれいな景色にわくわくする。

春はきらいだ。
何度も心がきゅっとなる。

それでも、私は前に進んでいかなければいけない。泣こうが落ち込んでいようが、ありがたいことに明日はおかまいなしにやってくる。

別れは悲しいだけじゃない。
それぞれみんな、まだ道の途中だから。

過去に触れて、未来を想って、今を心底愛おしいと思った。
そんな今年の春でした。


桜 2023

さみしさと悲しさと応援とだいすきを塗り込めて。

もうすぐ夏が立つ。



最後まで読んでくれたあなた。
ありがとうございました。
あなたの春はどうでしたか?

春瀬

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