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「SUM関数は使えます」って言わない方がいい

福祉や介護に携わっている職員の皆様において、自己研鑽に向けた自己投資を行っていますか?
自己投資といっても色々ありますが、ここでは興味、関心のあるテーマに関する研修を受講したり、書籍を読むなど、インプットするための投資(無料もしくは有料)と定義してみましょう。
最近では、オンライン研修などの環境も整っているので、これまでとは比べ物にならないぐらいインプットの機会を作りやすくなったのではないでしょうか。

Youtubeのような動画共有サイトを見ているけど、自己研鑽に繋がらない動画ばかり見ているというのも、もったいないですよね。
私はというと…、少しずつ進めていますよ。


今回は、自身のキャリア形成や将来像に向けた自己研鑽のあり方について考えていきましょう。

福祉職は自己研鑽しなさすぎ

私は、福祉分野に特化したコンサルティングを生業にしていることもあり、最新の業界動向や組織づくり、人材育成などの書籍を中心にインプットしています(お客様から学ばせていただくことも多々あります)。
立場上、採用面接を行うこともあり、福祉職出身者のケースが多くありますが、必ず、「自己研鑽のために取り組んでいることはありますか?」という質問をしています。
こちらのねらい(意図)としては、転職をした後の自身のキャリア形成が明確になっており、そのために必要な知識や学びの機会をどのように作っているかを確認したいというのがあります。

しかし、

・「新聞や読書はしていません」
=自己研鑽の意欲が弱い
・「外部研修などは年に数回です」
=自身のキャリア形成に必要なインプットが不足している
・「業界動向(介護報酬改定など)については経営層からたまに説明があります」=能動的な学びの姿勢

というような質問への返答があると、「ん〜」っと考え込んでしまいます。
こういう職員さんはもしかすると、現場でも育成することが難しい部分を抱えている可能性があります。
要するに、現場業務はそつなくこなせるんだけど、法人で求める期待人材像であるキャリアパスやそれを評価する人事考課制度でも「もう一歩」的な人材である場合があります。

福祉施設の自己研鑽としては、上位資格の取得がイメージしやすいと思います。
初任者研修修了者が介護福祉士を取得する、介護福祉士有資格者が介護支援専門員資格を取得して、生活相談員になるといったキャリアパスはどの法人にもあるケースでしょう。
キャリア形成としては間違ってはいませんが、「両利きの経営」で紹介されている「知の深化」に偏りすぎていて、結局、「ん〜」っていう人材を生み出しかねないのです。

いろいろな資格を取得することも大事ですが、法人のキャリアパスで求められる要素や自身のキャリア形成で必要な分野やテーマが異なることは客観的に理解しておく必要があると思います。
要するに、「介護福祉士」を取得していることは、主任やリーダー層に必要な業務や役割を担うことができるとイコールではないということです。

学びの姿勢は"情意考課"にも通ずる

人事考課制度では、「成績」「能力」と「情意」と呼ばれる、仕事に対する姿勢を評価要素に取り入れていることが多く、「積極性」「責任性」「規律性」「協調性」などの項目が設定されています。
自身の学びの姿勢というものは、結局、仕事との向き合い方にも影響するもので、例えば、「積極性」が高ければ、新しい知識や経験値を積み、現場に還元することを厭わない人材であり、「協調性」が高ければ、チームワークや多職種連携が円滑に機能するよう報告・連絡・相談の強化を働きかけたり、仕組みづくりを行うこともあるでしょう。

先述したように、「有資格者≠職層に必要な知識や技術を持っている」という前提では、キャリアパスで明文化されている業務内容や役割に必要な「コミュニケーション」「リーダーシップ」「課題解決力」「経営管理能力(マネジメント力)」などは別途、自己研鑽しなければ身につかない知識や技術といえるのです。
そのため、"日々の業務+α"で時間を捻出し、努力を積み重ねていかなければ身につけることが出来ないため、自己研鑽に対する姿勢が二極化してしまうのでしょう。
よって、情意考課の「積極性」「責任性」「規律性」「協調性」が出来ている人材は、自ずと自己研鑽にも積極的であったり、前向きな姿勢で取り組もうとする傾向が強いと感じます。

資格を取得する目的をその先に見据える

では、なぜ介護職員が上位資格を取得する動機は何なのでしょうか。
誤解があるかもしれませんが、それは「資格手当」として見返りがあることだと思います。
「介護福祉士」の資格手当5,000円、「介護支援専門員」の資格手当10,000円といったように、その資格に対する評価が金銭として職員に還元されます。
また、介護職員処遇改善加算関係においても、「介護福祉士」の要件がありますから、自身の処遇を高めていくためには資格というのはわかりやすい評価基準となっています(「介護福祉士」は特定処遇改善加算の「経験・技能のある介護職」の要件に含まれています)。

しかし、「介護支援専門員」のようにケアマネジメントの業務独占(士業)はわかりやすいですが、名称独占である「介護福祉士」を取得したからといって、知識は増えますが、劇的に介護技術が高まり、無資格者と雲泥の差が生まれるかというと、そうではないように思います。
要するに、介護系の資格取得はキャリア形成におけるマイルストーン(通過点・節目)であり、取得後、どう活かしていくのか、その先を見据えて資格取得や自己研鑽に取り組むことが重要といえます。

SUM関数だけがエクセルではない

本記事のタイトルも同様、エクセルで合計値を返す関数がSUM関数ですが、一番ポピュラーで、「エクセル=SUM関数」と思っている方もいるかもしれません。
逆にいえば、エクセルといえばSUM関数しか使ったことがありませんでは、「介護福祉士の資格は持っていますが何か?」と同じレベルなんです。
みんなが当たり前のように使っている、使えているSUM関数をわざわざ使えますといったところで、何の価値も評価にもつながらないのです(逆に探求不足とネガティブに捉えられる可能性が高いです)。

私は研修で、「もっとこうなったらいいなぁ」って思うこと、違和感に気づくことを伝えています。
そうするとその状態をもっと良くしたり、効率化を図るためのアイディアを思い付いたり、何か手段・方法がないか探究し始めます(「知の探索」として視野を広げます)。
そうすると、同じようなことを考えたり、悩んでいる人がネット上には多くおり、知識人の方々が丁寧に解説してくれていることが少なくありません。
「こうすれば出来るんだ」「こんなことが出来るんだ」という気づきを得る探求心こそが、自己研鑽に重要な要素だと思います。
探究心がなければ、そもそも自己研鑽なんて面倒臭いことしようと思わないでしょう。

ちなみに、エクセルを使うと、こんなことも簡単にできますよ(今後機会があれば、noteでも取り上げていきましょう)。
現場業務で「もっとこうなったらいいなぁ」と思うことがあれば、エクセルの関数を調べてみてください。
私も大体のことはネットで教えてもらえました。

・利用者の健康状態をグラフ化して、体調不良者の早期発見につなげる
(IF関数)
・職員研修に誰が参加しているかを確認する(COUNT関数)
・人事考課の結果を職員一人ひとりキャリアシートのように表示してフィードバックする(VLOOKUP関数、 HLOOKU関数)

探究心を持ったあなたらしいキャリア形成を

私が転職したきっかけは、介護福祉士、介護支援専門員の資格ありきのキャリア形成が自分の中でしっくりこなかったからです。

転職することを推奨しているわけではありませんが、自身の視野も広がり、福祉や介護業界にまた違った関わり方が出来るようになりました。
現場にいるとどうしても近視眼的に、「知の深化」に偏るのは仕方がないと思いますが、だからこそ、探究心を持って、「知の探索」にシフトしたキャリア形成を意識してほしいと思います。
繰り返しますが、上位資格を取得することだけが、あなたのキャリア形成ではないと思います。
あなたの興味・関心はそんな資格に縛られたものではなく、もっと創造的で、ダイナミックな職業人生を歩む可能性を秘めていると思います。

まだまだ組織としてマネジメント研修を現場職員に推奨していない法人があるかもしれません。
キャリアパスに求められる期待人材像を実現するために必要な能力開発である以上、法人としての人材育成の方針を転換していただくとともに、諸菌の自己研鑽を後押しできるような施策を講じることが必要な時代になっています。

自己研鑽したものは、決して無駄にならず、自身の血肉となります。
ぜひ、自分自身への投資をしていきましょう。

管理人

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