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何をやっているかではなく、目的・工夫・成果が知りたいのだ

緊急事態宣言が5月31日まで延長されました。
賛否両論あるような報道を耳にしますが、必要な判断だったのではないでしょうか。
専門家チームも「新しい生活様式」を発表し、長期化を意識して基本的な感染対策を常に講じた生活の必要性を国民に求めた格好です。

医療崩壊は目の前まで来ている状況といいますから、5月末までの折り返し地点と思い、もうしばらくSTAY HOMEです。
引き続き、医療・福祉従事者をはじめ、我々の生活を支えてくださっている方々へ敬意と感謝を申し上げます。

情報収集の癖(VAK)

福祉サービス第三者評価の訪問調査(経営層に対するヒアリングと資料確認)が出来ないなか、事業所様より資料を提供していただき、報告書を作成しているのですが、これがなかなか骨が折れます。

通常であれば、"経営層合議用シート(下記note記事参照)"という資料に基づいて、ヒアリングと資料の確認をさせていただくのですが、肝心のヒアリングが出来ないので、提供された資料からそれぞれの資料のつながりについて仮説を立てながら書くしかありません。

もともと視覚情報(Visual)が苦手な私からすると、経営層とのヒアリングを通した聴覚情報(Auditory)や体感覚(Kinestic)による情報収集にいかに依存していたか、自分自身の癖が改めてわかりました( VAKモデル)。

平面情報(2D)から立体情報(3D)へ

事業所様によって、提供いただける資料の点数も異なります。
たくさんご提供いただければ、それだけ多くの仮説が立てられるので内容も濃くできますが、その一方で、仮説を立てることさえできないぐらいの点数という場合もあります。

初めて第三者評価を受審するため要領がわからなかったり、こちらの説明の仕方が悪いのもありますが、こちらが戸惑ってしまう場合もあります。
とはいえ、この限られた情報で報告書を書くしかありません。

紙もしくはPDFによる平面情報(2D)では、ヒアリングで補っていた、なぜ取り組み始めたのか(目的)、どういうふうに進めているのか(工夫)、どういう効果や影響があったか(成果・アウトカム)といった情報の深み、いわば立体情報(3D)として捉えることが出来ません。
「情報を多面的に捉えよう」というように、立体情報(造語なのでしょうか)とは、ある側面からみれば「出来ている」ことが、違う視点からみると「出来ていない・課題」となって現れるように、組織やサービスの状態を多面的に捉えらえた上で、報告書を書いています。

例えば、保育園で避難訓練とは別に、「シミュレーション」と称した抜き打ちの危機管理意識を醸成する取り組みをしている、という資料が手元にあるとします。
この資料だけでは、「シュミレーション」という取り組みを行っているといった事実しかわかりません(2D)。
しかし、下記のような目的、工夫、成果について、追加情報があったとしたらどうでしょうか。

目的:若手職員の危機管理意識の醸成
工夫:プールや感染症、SIDS(Sudden infant death syndrome:乳幼児突然死症候群)など年間計画を立てて、若手職員を中心に実施し、反省を踏まえて手順や留意点を確認
成果:日々の保育においても、危機管理意識を持った保育を行うとともに、マニュアルの見直しや自主練習を促す

目的、工夫、成果の情報を補足的に活用できれば、

・若手職員の指導・育成に力を入れている
・事故報告書やヒヤリハットはどういった内容が多いか
・マニュアルの見直しや業務の標準化
・職員の主体性を促している

といった情報から仮説を立てることが出来ます。
そうすれば、「シミュレーション」という取り組みに深みをもたらす立体情報(3D)に変換させることが出来ます。
訪問調査では、こうした目的・工夫・成果の情報をヒアリングすることで、"経営層合議用シート"という平面情報(2D)を立体情報(3D)へ変換させていたんですね。

立体情報(3D)をグルグル回してみる

大事なのは、多面的に取り組みを評価する点にあります。
今のゲームはほとんどが3Dでキャラクターやフィールドが描かれていますが、スーパーファミ世代の私からすれば、Nintendo64のマリオをグルグル回してフィールドを駆け回った斬新さは今でも忘れられません(今のゲームはリアルすぎて、ついていけません…)。

話が少々ずれてしまいましたが、何が言いたいかというと、その取り組みだけで評価するのではなく、関連づけたり、違う視点から見たときに工夫していることや課題になっていることが見えてこないかということです。

例えば、「若手職員の指導・育成に力を入れている」という仮説について、他の取り組みについても、こうした視点が散りばめられているかどうかを分析する必要があります。

・チューター制度による人材育成に取り組んでいる
・若手職員同士で保育理念の目線合わせのための研修を行っている
・3ヶ月ごとに園長と面談を行い、悩みや不安なことを解消している
(育成計画の取り組み状況を踏まえ、アドバイスを行っている)

また、「事故報告書やヒヤリハットはどういった内容が多いか」みてみると、軽微な事故(通院を伴わないインシデンと)が多いというのがわかったとします。
若手職員の立ち位置(死角)や子ども同士のトラブルにつながりそうな観察力が課題となっていて、

・園内研修で"危険予知トレーニング(KYT)"を行っている
・保育室の環境設定の見直しに取り組んでいる
・危険箇所のチェックリストを用いて洗い出しを行っている
・先輩職員による保育見学を通したフィードバックを受けている

といった取り組みも行っていれば、「シミュレーション」の目的や成果と関連する線が一本引かれることになります。

私が評価に入るときは、理念や基本方針、事業計画書の重点目標に目を通した上で、取り組みについて見るようにしています。
なぜこの取り組みをしているのかが理念や基本方針につながっているかどうかを確認するとともに、職員自己評価で浸透しているかどうかのギャップを踏まえ、仮説を立てています。
この考え方は"バランスト・スコア・カード"の戦略マップに通じる考え方に近いと思いますので、参考になれば幸いです。

目的・工夫・成果が取り組む自信となる

資料だけで報告書を書くのに煮詰まってしまっているということをただただ伝えたい記事なのですが、皆さんの現場においても、「何をやっているのか」は資料をみたり、日々の職員をみていれば伝わってくるでしょう。
大事なのは、その取り組みの目的・工夫・成果を押さえているかどうかです。

介護がしたい、保育をしたいでは"手段"が"目的"になってしまっており、もっと高次の仕事のやりがいや自己実現を見失ってしまいます。
目的・工夫・成果を意識せずに取り組めば、それは単なる平面情報(2D)でしかなく、良いのか悪いのかさえ評価することが出来ません。
今のうちから、日々の介護や保育において目的・工夫・成果の意味づけをして立体情報(3D)に変換しておいてください。

訪問調査に来た評価者に、皆さんの取り組みを自信を持ってアピールするために。

管理人

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