それあなたの「思い込み」じゃないですか?

酷暑の夏から一変、秋をすっ飛ばし、肌寒い日々が続き、もう冬支度を思わせる気候になってしまいました。
今年も残すところ2ヶ月半余りとなり、徐々に慌ただしい時期となって行くわけですが、私自身、今年はトップマネジメント層の会議へ参加させていただく機会が多く、月次の経営状況や事業計画書の目標管理・進捗管理などに携わらせていただきました。

会議をダメにする3つの発言

皆さんの法人・施設においても幹部会議や主任会議、フロア(ユニット)会議などの各種会議を行っていると思いますが、会議と一口にいっても、情報共有を目的とする会議、職員から意見を出し合って検討する(ディスカッション)会議、委員会などテーマを絞って取り組みを深めるために検討する会議など多岐にわたっています。
職員からの意見が活発に取り交わされる活気溢れる会議は行われているでしょうか。

会議に参加をしていて気になるのは、「たぶん〜と思います」「〜すればいいんじゃなですか」「〜では出来ません」といった発言 なのですが、皆さんの職場にもこういった発言をする職員さんはいないでしょうか。

1.「たぶん〜と思います」
この言い回しは推測(憶測)であって、発言したAさんが勝手に思っている可能性が高いです。
実際にBさんに確認すると、「別にそんなことありませんよ」なんて返事がきてしまうと、会議に参加している他のメンバーには、Aさんの発言そのものが「それ本当(事実)?」という印象を与えかねません。
狼少年ではないですが、「この人のいうことは過信してはいけないな」という印象を与えてしまうことにつながるわけです。
そうすると、ディスカッションする必要がある会議において、Aさんの個人的な推測(憶測)的な発言をされても、全く意味がありません。
事前に議事録などを配布し、考える猶予を与えて会議に臨めるようにしている法人・施設であれば、「たぶん〜と思います」という発言そのものがナンセンス(意味のないこと)なので、Aさんを会議に参加させる必要があるか再考する必要があるでしょう(事実確認を怠ったAさんの能力や資質に問題があるわけです)。

2.「〜すればいいんじゃないですか」
この言い回しも、職員から意見を出し合って検討する会議に参加しているにもかかわらず、発言そのものが他人事になっており、検討する問題に対する当事者意識が欠如しています。
「〜ということを率先して取り組む必要があると思いますが、いかがでしょうか」ぐらいは会議に参加するメンバーとして、自覚と覚悟を持って会議に参加する必要があるでしょう。

3.「〜では出来ません」
このようなネガティブな言い回しで表現する職員さんもまだまだいらっしゃいますが、「なぜ、実現可能な方法論を考えていないのか」ということを突っ込まずにはいられないのです。
「職員が不足していて出来ません」、「現状の職員の能力では出来ません」、「利用者が重度化してきているので出来ません」などなど、こういった言い訳は、発言した職員の能力がないということを裏付ける何物でもありません(営業職がお客様が商品を買ってくれないので売れませんと言い訳しているようなものです)。
それぞれの言い訳の前に「(私の指導・育成が十分に出来ていないために)〜」と追加してもらうと、そうした発言をしている職員の無能さが浮き立ってしまいますので、心当たりのある方はくれぐれも要注意です。

実のある会議にするための3つのポイント

このように、法人・施設の意思決定機関でもあるトップマネジメント層の会議が十分に機能していない法人・施設は少なくありません。
忙しいスケジュールをやりくりして、1〜2時間のまとまった時間を確保して会議に臨んでいるにも関わらず、実のある会議でないとすれば、改善する必要があるでしょう。 では、どういった点を改善すればよいか、確認ポイントを3点ご紹介します。


1.会議に臨むための準備時間が十分確保できているか(資料作成を含む)
会議の議事録は事前に配布されますが、1時間の会議のために、どれだけ事前に準備する時間を確保できているでしょうか。
当日検討してもらえるよう資料を作成したり、どういった手順で問題提起するかなど、会議を円滑に進めていくためにも、事前の準備は最重要な要因(ファクター)です。
とりあえず会議に参加し、その場の雰囲気で発言内容を考えるなんていう強者(つわもの)がいれば、即刻退場してもらったほうがよいでしょう。

2.ファシリテーター役が場をきちんと仕切れる準備をしているか
当日ファシリテーター役となる司会を務める職員(輪番制で誰もが司会を務める機会を持たせているところもあります)も、当日の進行イメージを作っておく必要があります。
職員からの発表後、「何か意見がありますか?」という一方的な投げかけだけでは職員から意見が発せられることはないでしょう。
各自から意見を出してもらえるよう、「○○や△△の現状についてAさんどうですか?」と発言してもらうよう問いかけていくことが必要です(そのための準備をして臨んできているはずですから)。

3.合意形成(コンセンサス)を図るために、関係者への根回しを丁寧に行えているか
1にも通ずる内容ですが、討議するならば、結論(ゴール、落とし所)をきちんと設定しておき、事前に利害関係者(ステークホルダー)に丁寧に説明し、合意形成(コンセンサス)を図っておくことが重要です。
よくあるケースが、会議の場で施設長や事務長が初めて聞いた(事前に聞いていない(知らない))というケース。
施設長や事務長にとっても「寝耳に水」的な反応になってしまうので、「ここでは判断できません」や「そんなことは許可できない」といった回答になりかねません。
きちんと「報告・連絡・相談」の手順を踏んでいないがために、せっかくよい提案であっても、却下されてしまってはもともこもありません。
きちんと手順を踏んで、建設的な討議ができるような根回しを心がけましょう。

すべては「思い込み」が元凶

このように会議の進行ひとつとっても、参加する職員によっての意識の差というものが大きく、思うような成果をあげられないで悩んでいる法人・施設があるわけです。
その理由が、「あなたの思い込みで物事を進めている(考えている、判断している)」ということです。
会議の場で無責任な発言をする職員はその典型的な例で、状況の本質を全く理解できていないために、「あなたの思い込み」で発言しているに過ぎません(なので、信用ならないのです)。

また、「報告・連絡・相談」がきちんと出来ないケースも、「Aさんに報告したので、Bさんにも伝わっていると思っていました」といった「あなたの思い込み」が原因になっていませんか。
「Aさんは○○だから、たぶん△△だろう」と勝手に判断しがちですが、これもトラブルの元。
「○○と書いてあったので、△△だと思いました」もトラブルの元。
どうして相手に意見を求めたり、確認するというステップをすっ飛ばしてしまうのか、それは「自分自身が出来る(能力がある)」「正しい判断ができる」という自信過剰(自分自身への過度な「思い込み」)が原因になっていないでしょうか。
「以心伝心」という言葉もありますが、長年連れ添った夫婦やスポーツのペアなどでそれだけ苦楽を共にし、お互いの関係性ができていれば、アイコンタクトや阿吽の呼吸のように意思疎通が出来るかもしれません。
ただし、そんな人たちはごく一部であり、夫婦関係ですら他人ですし、職場なんて他人の寄せ集めですから、すべての意思疎通がテレパシーのように行くわけがないのです。

対人援助を行う上で、利用者がどう思っているか、どう考えているかきちんと意向や要望を確認する、個人の尊厳の尊重に人一倍気を配っているはずの専門職の皆さんなのですが、「思い込み」はそれ故の弊害なのかもしれません。
皆さん一人ひとり「思い込み」で物事を進めるのではなく、コミュニケーションを活発化させ、相手を理解した上で仕事をすることが出来る関係性を構築することを目指してください。
そうすれば自ずと会議は活性化されますし、無責任な発言をする職員も減ってきます。
離職理由の一番は「人間関係」といいますから、「思い込み」の人間関係ではなく、いろんなことを話し合ってみたらどうでしょうか。

まとめ

一緒に働いている仲間の志望動機や福祉観、どんなケアに挑戦してみたいかといったことを知って仕事をするのとそう出ないのとでは、相手に対する信頼度も変わってきます。
経営理念についての研修では理念の解釈について、リーダーシップについての研修ではリーダー像についてグループワークを通して、共通認識を持てるようにしています。
仕事をともにする仲間のことをもっと知ることで、きっとその「思い込み」は、あなたの勝手な「思い込み」だったと後悔することでしょう。

管理人

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