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-映画紹介-『ちひろさん』 人はそれぞれ違うから誰にでもやさしく誰にでもきびしく・・・。

《乱れ撃ちシネnote vol.104》

『ちひろさん』 今泉力哉監督 2023年公開 日本

鑑賞日 2023年5月19日 Netflix

【Introduction】
J君お勧めのこの作品を観るためにNetflixに入会した。

今泉力哉監督の作品を初めて観たのは『街の上で』(2019)。
[その時の感想メモです]
いや〜ギリギリ。
嫌いじゃないけど今ひとつ切なさがすれ違っている。
下北沢という街でこの年齢で自主制作映画が絡む。
これだけ並べば嫌いなワケがない。
でもどこかすれ違ってしまって楽しめない。
楽しみたいと思う気持ちとすれ違ってしまった。
若葉竜也とてもいいのに。
残念。

今泉監督のことが気になったので『こっぴどい猫』vol.18(2012)を観てハマった。
[その時の感想メモです]
『こっぴどい猫』観終わったとたんにうまい!と唸った。
久しぶりにドキドキするほど笑わせてくれる映画だ。
今泉監督は以前からなんとなく気になっていた監督だ。
モト冬樹生誕60周年という冒頭のクレジットがまずは目についた。
それが何なのよ。

冒頭3人のシーンで直感的にこの映画は面白そうだと感じさせてくれたのにその後20分ほどのらりくらりでなんだかな〜と思った。
ところが、
無愛想なバーの女とモト冬樹が絡むあたりから徐々に面白さが沸き立った。
それからはグイグイ引っぱってくれた。
無愛想な女(小宮一葉)がだんだん可愛らしく見え始め、
最終的には魔女に見えてくる。
凄い演出だしこの女優はすごいかも。

ラストの見事な裏切りシーンで楽しませてくれた。
こ~いう思ってもみない面白さで刺激してくれる作品と巡り会えるのはサブスクのおかげだ。
今泉力哉監督すごい。
っで、以前観た今泉作品ってなんの映画だっけな〜。


ということで備忘録を検索したところ今泉監督作品で観ているのはこれらでした。

⭕『こっぴどい猫』(2012)vol.18

⭕『サッドティー』(2014)vol.20

・『知らない、ふたり』(2015)vol.21

・『あの頃』(2020)

・『かそけきサンカヨウ』(2021)

・『お兄ちゃんは、戦場に言った!?』(2013) 


・『mellow』(2020)

・『his』(2020)

⭕『愛がなんだ』(2019)

・『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(2019)

⭕印の3本は超お勧めだ。
『こっぴどい猫』と『サッドティー』は“乱れ撃ちシネnote”に
アップしているけれど『愛がなんだ』はまだアップしてない。

『ちひろさん』の主役有森架純に驚いたのは確か『前科者』が最初。
面白い女優なのでその後観たのがこれらの作品。

⭕『前科者』(2021)

・『ビリギャル』(2015)

・『僕だけがいない街』(2016)

・『アイアムアヒーロー』(2016)

・『コーヒーが冷めないうちに』(2018)

⭕『花束みたいな恋をした』(2021)

⭕印の2本がお勧めだけどまだ“乱れ撃ちシネnote”にはアップしてない。

有森架純は好きなタイプの姿・かたち・顔つきではない。
どんな役にも溶け込んでしまうところがすごい。
だから彼女の出演作を何本も観ていたのに有森架純という名前を覚えていなかった。
今回の『ちひろさん』のポスターを観たときにも有森架純だとは気が付かなかった。

『ちひろさん』を観た。
やっぱりすごいな有森架純。

【story】
ちひろ(有村架純)は、風俗嬢の仕事を辞めて、今は海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働いている。元・風俗嬢であることを隠そうとせず、ひょうひょうと生きるちひろ。彼女は、自分のことを色目で見る若い男たちも、ホームレスのおじいさんも、子どもも動物も・・・誰に対しても分け隔てなく接する。

そんなちひろの元に吸い寄せられるかのように集まる人々。彼らは皆、それぞれに孤独を抱えている。厳格な家族に息苦しさを覚え、学校の友達とも隔たりを感じる女子高生・オカジ(豊嶋花)。シングルマザーの元で、母親の愛情に飢える小学生・マコト(嶋田鉄太)。父親との確執を抱え続け、過去の父子関係に苦悩する青年・谷口(若葉竜也)。ちひろは、そんな彼らとご飯を食べ、言葉をかけ、それぞれがそれぞれの孤独と向き合い前に進んで行けるよう、時に優しく、時に強く、背中を押していく。

そしてちひろ自身も、幼い頃の家族との関係から、孤独を抱えたまま生きている。母親の死、勤務していた風俗店の元店長・内海(リリー・フランキー)との再会、入院している弁当屋の店長の妻・多恵(風吹ジュン)との交流・・・揺れ動く日々の中、この街での出会いを通して、ちひろもまた、自らの孤独と向き合い、少しずつ変わっていく。

これは、軽やかに、心のままに生きるちひろと、ちひろと出会う人々―彼らの孤独と癒しの小さな物語。

『ちひろさん』サイトより

【Trivia & Topics】
*原作について。

本作は安田弘之のマンガ「ちひろ」の続編。
「ちひろ」では売れっ子風俗嬢ちひろの日常を描き、「ちひろさん」では風俗嬢をやめてからのちひろの日常を描いている。
マンガ版「ちひろ」を読みたくなる。
マンガ版「ちひろさん」はKindle Unlimitedで読める。
原作のちひろさんをどう有森架純が演じたのかナ?

*有森架純はすごい。
優れた役者には2つのタイプがいる。
どんな役にでも溶け込めるタイプとどんな役をやってもその人の個性でねじ伏せてしまうタイプが。
有森架純は前者の典型でどんな役をやっても有森架純が見つからない。
日常会話で「以前の仕事は風俗嬢ですよ」とさらっと口に出して不自然にならないのは彼女ならでは。
有森架純は何を演じても不自然さを感じさせない役者だ。

*何があっても大丈夫。
何があってもどんなことを投げかけられても動じないちひろさんが素敵だ。
人間には2つのタイプがいる。
テコでも動かなず自説を曲げないタイプと、何を言われてもそうかもね〜と聞き流せるタイプ。
前者をウドの大木派、後者を柳派とぼくは命名している。
どんなに打たれても流されない折れない柳派に憧れます。

*お弁当が美味しそう。
ちひろさんが働く“のこのこ弁当”のお弁当がとても美味しそう。
フード・スタイリストは飯島奈美
飯島奈美は小林聡美の推薦で荻上直子監督の『かもめ食堂』(2006)でフード・スタイリストとして初めて映画に参加。
ちなみに、
ぼくが観ている映画で飯島奈美がフード・スタイリストとしてかかわった作品はこれです。

『かもめ食堂』(2006)
『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(2007)
『めがね』(2007)
『歓喜の歌』(2008)
『ハンサム★スーツ』(2008)
『南極料理人』(2009)
『のんちゃんのり弁』(2010)
『船を編む』(2011)
『海街diary』(2015)
『深夜食堂』(2015)
『彼らが本気で編むときは』(2017)
『ねことじいちゃん』(2019)
『川っぺりムコリッタ』(2021)

連続TV小説「ごちそうさん」でも全編にわたり料理を担当している。

「ほぼ日」に連載された彼女のレシピ本も発売されてます。

*バジルさんが美しい。
バジル役のトランスジェンダーvanがとても美しい。
日本一のトランスジェンダーと言われているらしい。
彼女を見ていると男とか女だとかの区切りや区別がどうでもよくなります。

van

*雄弁な沈黙。
この作品が素敵なのは会話中の沈黙。失速寸前まで続く沈黙にこちらも息をつめてしまいます。

*つまりはシェーンなの?
ちひろさんはシェーンなのかな。
シェーン・カムバック」と少年が叫んでも決して戻って来ないからね。
誰にでも優しいちひろさんは誰とも馴れ合いたくない。
自由でいたいから。

*キャスティングも絶妙。
特に、平田満、リリー・フランキ−、市川和子、鈴木慶一、根岸季衣がハマり役。

【5 star rating】
☆☆☆☆

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めします。
☆☆☆:楽しめました。
☆☆:楽しめません。
☆:途中下車しました。


【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.7)

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