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-映画紹介-『サッドティー』 「ちゃんと好きって」ってどういうこと?

《乱れ撃ちシネnote Vol.20》

『サッドティー』

今泉力哉監督

【Introduction】
昨日書いた『お兄ちゃんは戦場に行った!?』の中野量太監督の『長いお別れ』『沈まない三つの家』を観るつもりだったけど、今泉力哉監督のことが気になったので『サッドティー』を観ることにした。

これが予想以上に面白い。

連作ショート・ショートのように綴られた12人の男女の恋愛破綻群像劇。ちぐはぐなで噛み合わないセリフ(想い)のように恋心も噛み合わずに話が進む。

『サッドティー』
監督:今泉力哉
出演:岡部成司、青柳文子、阿部隼也、永井ちひろ、國武綾、 二宮龍太郎、富士たくや、佐藤由美、武田知久、 星野かよ、 吉田光希、内田慈。
2014年公開。

【Prologue】
公園の後ろを電車が通り過ぎる長いカットに飽きた頃一人の男が登場し画面中央でゆっくりと靴の紐を結び競歩を始める。
画面をよこぎり黙々とぐるぐる公園内を競歩する男。



いつまでぐるぐるまわってるの1?


無駄に思えるほど長く続くカットに次第に笑いがこみ上げてくる。
脱力系映画なのねこれは。

【Story】
二股を解消したい映画監督とその2人の彼女。
彼の行きつけの喫茶店のアルバイトの女の子とマスター。
彼女へのプレゼントを買いに行ったお店の店員に一目惚れする男。
元アイドルを10年間想い続けるファンとその存在を知って彼に会いに行こうとする結婚間近の元アイドル。
さまざまな恋愛を通して描く「ちゃんと好き」ということについての考察。
(公式サイトより)

【Trivia & Topics】
*製作のいきさつ。
映画専門学校「ENBUゼミナール」による劇場公開映画製作ワークショップ「CINEMA PROJECT」の第2弾作品として製作された。
ゲスト出演した内田慈(ちか)以外は若手俳優。

*今泉作品の特色。
21世紀型駄目恋愛映画の旗手と言われる今泉力哉が監督と脚本を担当し『こっぴどい猫』同様男女の人間関係が込み入っているので図解しないととてもこの物語は人に説明できない。

*まるでドキュメンタリー。
全編を通じてオフビートの投げやりで無意味な男女の会話のジャブの脱力さかげんがたまらなく笑える。
いったいどこまでシナリオに書かれてありどれがアドリブかも分からない素人っぽさがこの映画をドキュメンタリー・タッチに染めている。

*映画はフレームだ!
冒頭の公園内のだらだらした競歩の意味が後半ですっきり解き明かされる。
競歩のシーンを見事なフレームで切り取った今泉監督のセンスが菅らしい。ジャン・ルノワール監督の「映画はフレームだ」という名言を思い起こす名シーンだと思う。

*あの猫は?
今泉監督の映画にはいつも同じ猫のイラストの壁掛けがかかっているけれどあれは何なんだろう。

*長回し好き。
配信映像で観ていると男女の会話のシーンで「あれ?パソコンがフリーズした?ダウンロードが止まったの?」と思わせるほど長い沈黙が続く演出もドキドキします。


この12人の男女のもつれた恋物語は予想もしなかった大団円を迎える。

p.s 古着屋の女店員棚子ちゃん(青柳文子)の可愛らしさはタマラナイ 。

【5 star rating】
☆☆☆☆

【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.5)


Amazon:☆☆☆☆


u-next :☆☆☆★



古着屋の女店員棚子ちゃん(青柳文子)の可愛らしさはタマラナイ 。
(トップの写真の女性)

明日は青谷文子の作品を観よう。


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