ここにしか家族はいないんだ!💗『ヤクザと家族』
《乱れ撃ちシネnote vol.106》
鑑賞日 2023年5月21日 Netflix
【Introduction】
スピーディーな展開で堪能させてくれた藤井道人監督の『新聞記者』は第43回日本アカデミー賞で「最優秀作品賞」「最優秀主演男優賞」「最優秀主演女優賞」を受賞しました。
その翌々年に制作した藤井監督の『ヤクザと家族』がNetflixの見放題で観られるので早速鑑賞。
60年代にワクワクさせてくれたヤクザ映画の王道を踏襲した映画だった。
王道のヤクザ映画とはざっとこんな感じです。
・義理人情にあつく組の規律を守り、めっぽう喧嘩に強い主人公。
・障害もしくは殺人事件が起こる。
・主人公が犯人として自首して刑務所に入る。
・何十年か後に主人公が出所すると寂れた組があった。
・シマ(縄張り)も時代の波にのった新興の組にとられていた。
・そこで主人公は立ち上がる。
といった流れで語られます。
今回の作品も義理人情の時代から経済活動最優先の時代になり、ヤクザが反社と呼ばれるようになった約20年間の物語です。
【物語の概要】
1999年。
覚せい剤で父親を亡くし母親もすでに死んでいる山本賢治(綾野剛)は職にもつかず悪友の細野(市原隼人)と大原(二ノ宮隆太郎)を手下にヤンチャしていた。
その日も薬物売買の現場を見つけた賢治たちは販売人から薬物を強奪して海に投げ捨ててしまった。
その後行きつけの『オモニ食堂』で賢治たちが飲んでいると、突然襲ってきた侠葉会組員が座敷で飲んでいた柴崎組組長柴崎博(舘ひろし)たちを襲おうとしたところを賢治が救った。
翌日、賢治たちは侠葉会幹部に襲われ、薬物を海に廃棄したことを賢治が白杖すると3人とも海外の臓器販売業者に売り飛ばされそうになる。
賢治のポケットから柴崎組長の名刺を見つけた彼らは柴崎組に交渉の矛先を変え、賢治たちは命拾いした。
ヤクザを嫌悪する一匹狼の賢治だったが柴崎組長のおかげで命拾いし、身よりも職もない賢治たちを暖かく迎え入れてくれた組長の人がらに惹かれて柴崎組組員となる。
2005年。
組長に忠誠をつくし喧嘩も強い賢治はヤクザとして成長し組長も賢治のことを我が子のように可愛がった。
侠葉会との縄張り争いは激化していった。
キャバクラで侠葉会の組員とひと悶着起こした賢治はそこで女子大生のホステス由香(尾野真千子)に出会い家族のいない同じ境遇の由香に惹かれていく。
ある日賢治や柴咲が乗る車が襲撃されて運転していた組員が殺されてしまう。柴咲組の面々は激怒するがマル暴の刑事大迫(岩松了)から諭され警察で事件を片付けることで柴崎組長は手を打った。
納得がいかない賢治は侠葉会が遊んでいる場所に乗り込んで若頭川山(駿河太郎)を殺そうとするが賢治の後ろから柴咲組若頭の中村(北村有起哉)が追い抜いて賢治に「組を任せる」と言い川山を日本刀で刺す。
賢治は兄貴分の中村に「組をお願いします」と言って自分が罪を被り14 年の懲役刑を受けた。
2019年。
14年後に出所した賢治は暴対法で衰弱した柴咲組の姿を目の当たりにする。
物語はこのあたりから終盤に向かい様々な局面が語られます。
・女子大生の由香はどうなっていたか。
・賢治が組を託した中村は何をして組を維持していたか。
・組長はどうしているのか?
・大迫刑事は?
・一緒に柴咲組に入ったダチの細野はどうなったか?
周囲の人間の人生設計は賢治が服役している14年の間に大きく変化していました。
【Trivia & Topics】
*1999年、2005年、2019年。
時代の変化と賢治の変化を3つの時代に分けて描きます。
賢治が出所した2019年には完全に反社(反社会的勢力)に対する締め付けがきびしくなっていた。
特に2019年6月にお笑い芸人(吉本興業所属)による闇営業が発覚し大きな社会問題になりました。
*密接交際者のこと。
暴力団員と交際したり,利益を供与したりすると,密接交際者と認定され,名称が公表されたり,銀行取引の停止等の事実上の制裁が加えられることになり,事業活動が事実上不可能となります。
「密接交際者」とは下記を指します。
*本作の魅力。
素晴らしいキャストに支えられて全編力強く物語をつき進む藤井監督による良質なヤクザ映画です。
どのような経緯で国家は暴力団を封じていったのかが良くわかります。
そしてそのことにより反社の人間や密接交際者にどんな人生が待ち受けていたのか。
暴力団員をやめても就職先は受け入れてくれない。辞めてから5年間は携帯電話(スマホ)の契約が出来ない。何年たっても銀行口座が持てない。
そのことで新たな犯罪が産まれているのではないでしょうか。
*差別と区別。
暴力団に在籍していた人間は更生なんかできない。どうせ再犯するだろう。という偏見で見る人が多い世の中でどうやって彼らは社会復帰することができるのだろう。
元・反社であれ一般社会人であれ悪事を働く人もいれば善意の人もいるはずだ。区別は必要かもしれないけれど差別はいけない!
綾野剛またまた快調!
エピローグの持っていき方も素敵でした。
【鑑賞ガイド】
😁😁😁
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
😁😁😁😁😁:見事な作品。
😄😄😄😄:お勧めです。
😀😀😀:楽しめます。
😔😔:苦手です。
🥵:途中下車。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【巷のうわさ】
Filmarks:☆☆☆☆
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?