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-映画紹介-『新聞記者』 新聞がこんなネタを出すっておかしくないですか?

《乱れ撃ちシネnote vol.105》

『新聞記者』 藤井道人監督 2019年公開 日本

鑑賞日 2023年5月21日 Netflix

【Introduction】
前回の『ちひろさん』を観るためにNetflixに加入した。

前々からNetflixで観られる作品をリストアップしてあったのでこの機会に観よう。
最初に観たのがこの作品。

23.05.20 (44)☆☆☆☆TVシリーズ全6話『新聞記者』 藤井道人監督 2022年 日本 Netflix

米倉涼子主演にひかれてとりあえず第一回目だけでもと深夜に観始めたら止まらない。
結局270分ぶっ続けで観終わったら夜が明けていた。

まずはキャスティングがいい。
米倉涼子の抑えた演技も良かったけれど、
芸達者な脇役が周囲を固めると作品の厚みが増す。
綾野剛、ユースケ・サンタマリア、田中哲司、田口トモロヲ、柄本時生、吹越満、寺島しのぶなど切りがないけどお気に入りは名古屋地方検察庁の検事役の大倉孝二だ。
大倉孝二が最初に目についてのは『ピンポン』のアクマ役。

この人は誰?な役者だった。

『ピンポン』のアクマ
大倉孝二

『新聞記者』は実際に世間を騒がせた事件を下敷きにしたフィクションだ。
事実とは異なっているとか遺族から協力を拒否された作品だとかの批判もあるけれど映画は面白ければいいというのがぼくのスタンスだから何の問題もなく楽しめた。
この作品の中で官僚の多田智也(田中哲司・適役)が言い切る
「この国の民主主義は形だけでいいんだ」というセリフがこの作品のすべてを物語っている。

この作品は2019年に劇場公開された『新聞記者』のTVヴァージョンだ。

映画版『新聞記者』はTVシリーズに輪をかけて面白い。
最初はおどおどしていた女性記者が事件の核心に近づけば近づくほど
粘り強く力強くなるシム・ウンギョンの演技でこの作品に引き込まれました。
昨年この作品をAmazonで観ている。
[その時の映画日誌のメモ]
主役の女性記者のセリフ回し、間のとりかたが素人くさくぎごちなく感じたのがいつの間にか説得力を持って迫ってくる頃からこの人は誰なんだ、とても上手い役者なんじゃないかなと思わせる。

見終わってからググったところ彼女は韓国人。
しかも映画の中でも韓国人だったことであの独特の雰囲気がな〜るほどそうだったのかと納得。
ドラマチックな題材をヒステリックにならずじっくりじわじわと締め上げるように終盤に持っていく監督も見事だし、シム・ウンギョンの演技に対しての☆☆☆☆☆かな。

シム・ウンギョンは大分前にAmazonで観た『怪しい彼女』の主役だった。

21.10.24(02)☆☆☆☆『怪しい彼女』ファン・ドンヒョク監督
[その時の映画日誌のメモ]
なんてこったい。
またまた面白い作品が韓国映画だ。
このところヨーロッパの映画は途中下車が続くっていうのに。
ようやく韓国映画に目が向き始めた。

本作はタイムパラドクスもの。
結婚直後に戦場に向かった夫は戦死し、
極貧生活で子供を産み育てた主人公の婆さんは、
一人息子を見事に育て上げ、
息子は国立大学医学部の教授。
息子の嫁とは折り合いのつかない彼女は小うるさい姑で、家族にも疎まれている。
ある日遺影を残そうと写真館に入った彼女は二十歳の娘に変身してしまった。
最終エピソードでぐっと泣かせたあとに素敵なラストが待ちかまえていた。
久しぶりに文句なく楽しめた作品だ。
いい監督なので『トガニ幼き瞳の告発』が観たかったのに無料では観られないのが残念。

(5月26日までU-nextの見放題で観られます)

シム・ウンギョンはその後に観た2作品も面白い。

22.08.21(39)☆☆☆『サニー 永遠の仲間たち』 カン・ヨンチョル監督 2011年公開 韓国

22.10.15(21)☆☆☆★『ブルーアワーにぶっ飛ばす』 箱田優子監督 2019年公開 日本

現在サブスクで観られる藤井道人監督の主な作品はこれです。
・『ヤクザと家族』 Netflix

・『デイ・アンド・ナイト』 U-next

・『宇宙でいちばんあかるい屋根』U-next 以前観ている。

・『余命10年』Amazon

・『青の帰り道』Amazon 有料

・『光と血』U-next

・『7s』U-next

「乱れ撃ちシネnote」はあくまでも映画紹介日記なので今回は映画版『新聞記者』のご紹介を。

【Story】
ある日の深夜東都新聞社会部に羊の絵と共に大学新設計画に関する極秘書類がFAXで送られてきた。
吉岡エリカ(シム・ウンギョン:日本人の父と韓国人の母を持ちアメリカで育った)は編集長に命じられてこの極秘書類の真相を探るための取材をはじめる。

内閣調査室の若手エリート官僚の杉原拓海(松坂桃李)は現政府に不都合な人物のスキャンダルをでっちあげたり政府に都合のいい誤情報をSNSで拡散して情報操作する仕事に疑問を感じていた。
杉原は上司の多田(田中哲司)に国家が嘘を流していいのかという疑問をぶつけると、
嘘かほんとかは決めるのはお前じゃない。国民だ」と多田はうそぶく。

杉原には妻の出産が迫っていた。

ある日外務省時代の赴任先北京で杉原を教育してくれた上司神崎俊尚(高橋和也)から連絡があり久々に再会する。
神崎は5年前にデータ改ざんの責任を一人で背負った過去がある。
杉原がそのことを謝ると「杉原。俺のようにはなるなよ」と笑うだけだった。

数日後、杉原は外務省時代の同僚で神崎の後任になった都築亮一(高橋努)とばったり顔を合わすと「俺は内閣府の大学の件で神崎さんの後任に決まったぞ」と聞かされた。
杉原が何のことか尋ねると都築は「お前たち内調が神崎さんを調べたんだろ」と答える。
神崎を追い込んだ内閣調査室は神崎と仲の良かった杉原には何も知らせていなかったのだ。

一方、吉岡は、大学新設計画の極秘書類を送ったのは内閣府に出向している人物ではないかという情報を得て特区の担当だった神崎に思い当たる。
しかし、数日後、神崎はビルの屋上から飛び降り自殺をした。

神崎は何で自殺したのか。
吉岡に送られてきた内部極秘情報の発信人は誰だったのか。
吉岡が確実な情報を掴んでも上司が記事にすることをこばむのは何故か。

【Trivia & Topics】
*絶妙なキャスティング。
とても説得力のあるキャスティングでした。
特にこの三人が目につきした。
田中哲司:見事に血も涙もない冷徹な官僚ぶりでした。

田中哲司


高橋和也:国民を裏切ってしまった自分の行為を恥じて苦悩する姿が痛々しいほど感じられます。

高橋和也

北村有起哉:現場の記者と会社の上層部に板挟みになる風情が滲み出ていました。

北村有起哉

*三者の立場。
マスコミと官僚と検察。立場は違っても自分たちの保身と利権で動いている様子がわかり易く描かれています。

*俯瞰撮影と雄弁な沈黙。
藤井監督は俯瞰撮影をとても効果的にとり入れます。
また、息をつめてしまうほど会話の途中の沈黙が長いことで登場人物の心が浮き彫りにされます。
ダイナミックで見事にサスペンスあふれるエンタテイメント作品でした。

【5 star rating】
☆☆☆☆☆

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。

【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.7)

Amazon:☆☆☆☆

u-next :✖



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