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コーチングの最中に、コーチが意識していること。

先日、相互コーチングをしていただいた際に、こんな質問を受けた。

「コーチングをしているときの意識ってどんな感じなの?」

今回は、この問いに対するアンサーを自分自身の中でも整理、言語化したかったので、今日は「コーチング中の意識の使い方」をテーマに書いていく。

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私がコーチング中の意識構造として、ぴったりだなと思っている例えがある。「あおくんときいろちゃん」という絵本をご存じだろうか。

かの有名な「スイミー」の著者、レオ=レオニの名作で、私は幼いころからこの絵本が好きだった。

絵本の内容はぜひこちらの読み聞かせ動画で観てほしい。

あらすじを簡単に説明すると、あおくんときいろちゃんは、もともと別の個体。ある日あおくんは大好きなきいろちゃんと遊ぶためにきいろちゃんを探しに出かける。あおくんときいろちゃんが、やっと出会えたときに、一緒にいる時間がうれしくてうれしくて、交わって「みどり」になる。

でも、遊び終わった最後にはまた離れて、「あおくん」「きいろちゃん」としてそれぞれの生活を過ごす。

ざっくりだが、この部分がまさにコーチングをしているときの私の意識構造を表現してくれている箇所である。

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コーチングをしているときに何を考えているのか。駆け出しコーチなら、コーチがどんな意識をコーチング中に巡らせているか気になるのではないだろうか。私も、コーチングを始めたとき、まさにそうだった。自分がコーチとして、相手が求めるor何か気づきや発見があるような時間を過ごすために、どうやって質問を決めているのだろうか。限られた時間の中で、全体の流れのハンドリングはどうされているのか。そんな質問を幾度かマイコーチに投げかけたこともあった。

けれど今は、目の前のクライアントに向き合っている時間は、上記のようなことは全く考えていない。

「よいコーチングをしなきゃ」「価値提供しなければ」「相手にとって有意義な時間を創り出さなければ」…。こう意識した瞬間は、自分の「内側」にしか意識が向いていない。自己内対話がはじまっており、この時の主語はすべて「私は(I)」である。

「(私が)よいコーチングをしなきゃ」「(私が)価値提供しなければ」と、そんな風に思った時点で、傾聴のレベルが下がる。この時は、相手に意識を集中できていない瞬間だ。

傾聴レベル高く、相手に意識を集中できているとき、すべての問いの主語は「あなたは(You)」で始まる。それはアウトプットだけでなく、自己内対話の際も同じ状態になる。そこに意識を集中させるのだ。

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あおくんときいろちゃんの表現でいうと、それが「みどり」の状態で、「自分の意識と、相手の意識を重ねている」瞬間だ。相手が見ている世界を自分が一緒に体感すること。これがコーチングの最中に起きている意識構造だ。だからこそ、コーチの直感が時に相手の無意識を引きだし、意識化するのである。

その状態になるためにどうしたらよいのか。

私が思う一番わかりやすく、自然に実現する方法、それは、あれこれと思考で考えずに、「相手へ好奇心を向けること」

これはコミュニケーションの基本的な姿勢でもある。相手が話している最中に「次何を発言しよう」と考えているうちは、自分に矢印が向いている。一方で、相手の「話の内容(コンテンツ)」にだけ集中してしまうと、逆に自分の直感に気が付けなかったり、相手の表情やしぐさに注意を払えなくなる。だからこそ、「相手の話に集中しつつ、ぼんやりといる」この状態が、傾聴レベルが高く、クリエイティブな発想や直感が浮かびやすい意識状態だと言える。これは脳神経科学的にも証明されている。デフォルト・モード・ネットワーク(DMN:Default Mode Network))、セントラルエグゼクティブネットワーク(CEN:Central Executive Network)の2つの切り替えがコーチングの最中には意識的に働いていると感じている。つまり、DMNとCENのハブ的な役割を果たす、両者の中間となるようなネットワークである、セイリエンスネットワーク(SN:Salience Network)を動作させているからこそコーチングの時間は短時間でもエネルギーを消費するし、普段使わない思考、意識をしている感覚を抱く。(個人的所感ではあるが)

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話を戻そう。

コーチングの最中に生じている意識構造は、複雑で高度だ。意識的に操作することは難しい。だからこそ、まずは第一歩として、目の前のクライアントに対して目いっぱいの好奇心を向けてみる。

相手の世界はどんな風景、色をしているのか。何が見えているのか。何を大切にしているのか。どんなことは隠したいのか。どんなことに喜びを感じ、どのシーンで心が動くのか。

そんな風に意識を向けていると、自然に「あおくんときいろちゃん」でいうところの、「みどり」の比重が増えていく。そこに自分の直感を届けてみる。そうすると、さらに意識が重なり合い、混じり合い、そして離れるという崇高な体験をすることになる。

私がコーチとして感じることは、この体験をして、(物理的に)離れてもなお、完全に意識が分離することはないな、と思う。私があおくんであるならば、離れてもみどりの部分は残り、私としてあたらしいあおになっていく。そんな感覚がある。そうやって、人の意識は重なり合い、混じり合い、そして離れてもつながっていく。それが人材育成的観点から捉えれば、変化や成長とも言えるのだろう。

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こうやってクライアントの方々からたくさんの「色」を見せていただき、私の日々もまた、彩っている。

コーチングにおけるコーチとクライアントの関係性は、対等だ。コーチもまた、クライアントに支えられ、与えられ、共に歩んでいくパートナーであり続けるんだと思う。




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