見出し画像

憧れの先輩Yさんの話

新卒で入社した会社で、教育担当だったYさんの話。
仕事はストイックに成果を出していて、人柄はいつも余裕があって優しい。しかも楽しそうに働いていて、擦れた所なんてない。でもたまに抜けた所があって、飲み会翌日には路上から出勤してきたりもする。皆から好かれていて、新入社員の自分にとっても接しやすい存在だった。だから、その先輩の姿を目指すようになったのは自然だった。

Yさんは仕事終わりによく飲みに誘ってくれた。仕事では苦労が多かったけれど、憧れのYさんに誘ってもらえると嬉しくて、辛さはすぐに忘れられた。飲み歩くことで仲間として認めてもらえた気がした。お酒は弱いけど、飲みの場が救いだった。

そんな日々の中で、Yさんが飲み屋に強いこだわりがあることに気付いた。
Yさんはいつも飲み屋の情報を調べていて、毎回新しい店に行こうとした。家と逆方向の電車に乗ることもあった。(私たちは家が近かった)

当時は「近場にある美味しい店に通えばいいのに」と思っていたけど、最近違う見方をするようになった。「やっぱりYさんはすごい」だ。
仕事に慣れてくると、気づけば日々がルーチンになっている。自分から新しいことをしなければ、平日も休日も同じことの繰り返しだ。特に仕事で疲れていると、わざわざ新しい行動をしようなんて気力がでない。
それでも、いつも新しい経験・発見を求めて行動しているから、Yさんはいつも楽しそうにしてたのかな、と思う。何事であっても、能動的な人は魅力的だと思う。

Yさんは昇進と共に別部署に異動となり、一緒に働いたのは1年だけだった。それでもYさんの存在は大きくて、3年目に転職と移住を決断した時には、真っ先に報告した。

お世話になった恩を裏切ったような罪悪感があって、話を切り出すのは本当に怖かった。何回かチャンスを逃して、2週間くらいしてようやく話せた時、いつも通りの飄々とした感じで応援してくれて、いつも通りに飲み歩いてくれたことが本当に嬉しかった。職場を離れても同じ関係でいられるんだ、と安心した。社会人になって、距離が離れても同じような関係を続けれられる人はどれだけいるだろうか。その後、酔い潰れたYさんを背負って家まで送り届け、一緒に奥さんに怒られたことまでが大切な思い出。

コロナ禍でYさんの大好きな飲み歩きは難しくなってしまった。それでも、きっとYさんは別の楽しみを見つけていると思う。あと数年で当時のYさんと同じ30歳。私も後輩にとってのYさんになれるだろうか。

【追記】
退職祝いで頂いた2つセットのビアカップ。残念ながら、まだ一緒にお酒を飲む相手はいません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?