現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その23)

 強行することになったものの、権中納言は関白の嫡子《ちゃくし》であるため、二条宮へと向かう婚礼の儀式の華々しさは並大抵ではなかった。また、飾り立てられた女四宮の容姿にも何ら不満はなく、どこまでもあどけなく愛らしかった。とても誇らしげで何の悩みもなさそうに振る舞う様や、かわいらしく親しみやすい人となりは、どのような欠点であっても許してしまいそうになる。
 今回の結婚を悲しくつらい因縁だと塞《ふさ》ぎ込んでいた権中納言は、耐えがたい長い夜を過ごすことになるに相違ないと思っていたので、ほっと胸を撫《な》で下ろした。確かに女三宮の「蓑代衣《みのしろころも》」(蓑《みの》代わりの雨具)にはならないものの、それでも興醒《きょうざ》めな独り寝は随分と慰められた。

(続く)

 強引に結婚させられた権中納言は、女四宮の里である二条宮で本人と対面します。そもそも帝と摂関家の血を引く女性ですので、容姿にはまったく問題ありません(皇后宮の血を引く女三宮と姫君はあくまで別格)。ただ、中宮(母親)に甘やかされて育ったのか、かわいらしさや愛らしさの中に、奔放さや勝ち気な性格が見え隠れしています。

 それでは次回にまたお会いしましょう。



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