現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その33)

  覚めぬ夜の夢の契りの悲しさをこの世にさへも添へて見るかな
 (覚めぬ夜の夢のような悲しい契りを、再び現世で目《ま》の当たりにしています)

「確かにあなたの思いは滅多《めった》にないものだったと思っていますが、あの一夜の件で思い悩んだ末に、このように苦しい生涯を終えることになってしまったのも事実です。同じように嘆く人の身の上が心苦しいため、どうにか慰めてあげてくれませんか」
 返す言葉もなく涙にむせぶ関白は、はっと目を覚ましたが、目覚めの心地は筆舌に尽くし難かった。告げられた内容に思い当たる節はなかったものの、とにかくも各地の寺で誦経《ずきょう》を行わせた。

(続く)

 関白の夢枕に立った故・皇后宮の願いは「自分と同じ境遇の人を慰めて欲しい」というものでした。女三宮と権中納言の関係を指していますが、関白には何のことを言っているのかさっぱり分かりません。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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