現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その29)

 奥ゆかしく自尊心のある高貴な女性であろうと、身分の低い山賤《やまがつ》のような女性であろうと、あらかじめ事情を説明し、女四宮が納得した相手ならば口うるさく嫉妬されることはない。しかし、些細《ささい》な秘密も断じて許せない潔癖な性格のため、根拠のない憶測ですぐに不信感を抱き、「心の奥底で隠し事をしているのではないか」と独り合点すると、相手と共に命を絶つと言わんばかりに泣き焦がれ、恨みながら纏《まと》わり付くので、権中納言は困り果てていた。

(続く)

 前回に引き続き、女四宮の嫉妬の様が描かれています。
 平安中期の貴族は一夫多妻ですが、事前説明があって納得できれば、女四宮は他の女との関係も許可していたようです。しかし一方で、少しでも不信感を抱くとヒステリックに騒ぐため、権中納言はほとほと困っていました。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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