現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その24)


 権中納言は「我が物顔で朝遅くまで寝ているのは失礼に当たる」と言い訳をしつつ、深夜の時分に二条宮を後にした。女四宮との結婚を悔やみ、「どうしてこのようなことになってしまったのか」と、悲しさを募らせて泣き入る自分をひどく不本意に思いながら、暗い場所で急いで手紙をしたためると、女三宮の女房の中納言の君に届けた。

  恋ひわぶる命のせめてながらへてあるにもあらぬ音《ね》をも泣くかな
 (恋で思い乱れるわたしはかろうじて生き永らえてはいますが、今すぐにでも死んでしまいそうで、声を上げて泣いています)

 しかし、女三宮がこの手紙に目を通すことはなく、まったく無駄に終わった。

(続く)

 女四宮と結婚して多少は落ち着くかも――と思わせておきながら、手のひらを返したかのようないつもの権中納言が描かれています。
 また、前回に描写がありましたが、女四宮は外見・内面共に少し子どもっぽいところがあり、自分の思い通りにならないとすねます。もしこのことがばれた日には大騒動が起きるに違いありません。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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