現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その21)

 程なく月が変わった。女三宮は神事のためにいったん里に下がるはずだったが、寂しく感じた帝は職《しき》の御曹司《みぞうし》(中宮職の部屋)に引き留《とど》めた。人目の少ない場所なので、権中納言は身に添う影のように中納言の君に付き纏《まと》い、何としてでも手引きをするように責め続けた。しかし、古歌に詠まれた関守《せきもり》のように警戒する女三宮は、常に複数の女房をそばに置いて厳戒態勢を敷いていたため、情けないことにとても手が出せる状況ではなかった。

(続く)


 権中納言は女三宮から拒絶されていて、人目の少ない場所でも手出しの機会がまったくありません。一見、儚《はかな》いように見えて実は芯の強い性格は母親譲りですが、後ろ盾がなく、苦労してきた結果とも言えます。

 それでは次回にまたお会いしましょう。



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