現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その30)
女房などが近くにいるときはさすがに態度に出さないものの、二人で添い伏しているときに少しでも不審なことがあると二、三日も離さず、ひたすら泣きながら恨み言を訴えるので、権中納言は甚《はなは》だ不愉快で心苦しかった。
だが、どのような前世の因縁《いんねん》なのだろうか。女三宮とはまったく異なる、嫉妬深い女四宮を心外で煩わしいと感じながらも、何かと制約の多い宮仕えの日々に慣れることもできず、気が塞《ふさ》ぐ昼夜を共に暮らすうちに、いったん別れると気になって恋しく思うようになってしまったため、我ながらどのように心を二人に分けているのかと奇妙に感じていた。
(続く)
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引き続き、嫉妬する女四宮の描写になります。
ヒステリックな女四宮に振り回される権中納言は、相手を不愉快に思いつつも、日々を重ねるうちに次第に離れがたい存在になっているようです。
それでは次回にまたお会いしましょう。
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