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『老いと建築』 阿佐ヶ谷スパイダース

2021年11月8日(月)19時開演
@吉祥寺シアター
¥3,000(プレビュー・バルコニー席/手数料¥770)

阿佐スパはずっと気になっていたのに、どうしようと思いながら一度も見ないまま何年も経ってしまった。長塚さんの声と立ち姿がとても好きなんだけど、内容がどうも重そうだなあって。2004年の『はたらくおとこ』をシアターTVで観たきりかな。
そこに大好きな村岡希美さんが入団したという。むむ、これはやはり観るべきか、ということで2019年の『桜姫』をやっと拝見。なかなか良かった。

あれからもう2年も経っててびっくり。パンデミックのせいで月日の感覚がちょっとおかしいよね?でもってこの『老いと建築』は、劇団先行の案内が来たので早めにチケットを入手。
だけど劇団先行なのに手数料高くない? スマチケにしなかったら990円だよ?
先日、復活したキャラメルボックスも予約しようとして880円の手数料(コンビニ払いだと1100円!)にビビって一般発売にしたよね。チケット代が安くないのに、さらに手数料がこんなに高いなんて〜〜

前置きが長くてスマヌ。
今回の作品は、なんというか、とてもよかった。
キチンと全てを理解できているかというと、まったく自信がない。というか、理解が追っつかないのはわかってる、という状況。だけど、とてもよかった。
老女と家族と住居である家にまつわる話。
主演は大好きな村岡さん。圧倒的に素晴らしかった。野田さんも絶賛してたけど、やはりうまいのだな〜。

STORY
高齢ゆえにバリアフリー化を余儀なくされる家。独り住む老婆は美意識を損なう老いを受け入れることが出来ない。娘や息子はさらにその先の改装・改築を考える。老婆は彼らにこの家を渡したくはない。同居の甘言を囁く子供達孫達と、歳を重ねるごとに性格が激しく歪む老婆との応酬。さらにこの家を設計した建築家、既に先立った夫の幻影と思い出が現在と入り混じり、ますます老婆の言動は乱れゆく・・・(公式サイトより)

広い板張りの床、何本かの高い柱、中央に大きな木のテーブルと数脚の椅子。真っ赤な衣装の老女が静かに座り、そこに紙吹雪が舞い落ちる印象的なオープニング。
紙吹雪は気付くと緑色で、劇中で片付けたりされずに誰かが歩くたびサラサラと散らばる。バルコニー席から見下ろしているので床面がよく見えるのだ。話が進む中で、それが木の葉なのだとわかってくる。

老女と亡き夫、彼らの息子と娘、孫ふたり。三世代に渡る40年と現在が段々と入り乱れてくる。老女の記憶と「家」の記憶が混入しているらしい。それとともに「家」が傾(かし)いで形が溶け出す。間取りがいつの間にか入れ替わり、リビングは走っても走っても辿りつかない。中庭をゆくと広大な湖があり、玄関まで迷わぬよう案内が必要になる。
「これは現実」とおもって見ていたものも、実は記憶だったのかもしれない。

老女と娘の確執は根深いが、終盤でその原因が明かされていく。
それはとても衝撃的だったけど、それによってそれまでキャラクターに抱いていた印象がぐっと変わったのがすごい。
とはいえそのシーンも老女の記憶なのだとしたら、事実であるかはわからないけど・・・
事実だったなら、娘を守ったはずなのに関係がこじれてしまったのが悲しいし、孫娘は転職した方がいいのでは、と心配になる。

しかしこの一家、女性が矢面に立って踏ん張るのに対して、男性陣はふわふわしてしょうがないな。
老女の夫との修羅場は客席がドッと沸いたけどアタシは笑えなかった。あれを多くの人が笑うという現実にげんなりした。
最初はイラッとした「りぼんだよ」は、実はなかなか良いんじゃないの・・・となった。

結構な頻度でこの家をつくった建築家が出てくるんだけど、これも老女の記憶なんだろうかねえ。最初は幽霊かとおもって見てたんだけど。演じる伊達さんも好きな役者さんなので、とりあえず眼福、耳福を堪能。
というか皆さま声が良い・・・何度も言ってるけど村岡さんと長塚さんも声が好きすぎて。阿佐スパにじょじょみさんが加入ってめっちゃオレ得じゃん。いまさら噛み締めてる。
見終わった瞬間、拍手をしながらじわーーーっと何かが込み上げてきて、お話としてはキツいところも多かったにも関わらず、ものすごくしあわせに感じた。いいものを観た、体感した、という多幸感。村岡さん演じる「わたし」がカッコよくて。意固地で歪んでるかもしれないけれど、孫娘にはカッコいい女性と映っていたという、その感じがよくわかる気がした。
最後に家族の差し伸べる手を受け入れていくシーンはエモかった・・・。アタシは娘よりもちょっと年上ってくらいだけど、なんとなく「わたし」に感情移入していた気がする。こどもはいないから、確執もないけど・・・。

いやでもお金持ちだよね。このおたく。建築家が一から図面引いてつくった訳でしょ? 玄関からフローリングのバリアフリーで、大きなリビングに暖炉、どの部屋からも見える中庭がある三階建て。すげーな!
画家って職業を名乗れるほど売れていたんだろうかねえ。あなた(役名)の家が裕福だって話でも、ねえ。なんて庶民は羨望の眼(まなこ)で見てしまうのであった。

公演公式サイト

ちょっと前の記事だけど、読み応えのあるインタビュー→カンフェティ
開幕のニュース→ナタリー


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