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西尾維新の書く小説は[西尾維新]という一つのジャンルである 「デリバリールーム」感想とか雑記

なんかタイトル長くなっちゃった。

どうも、みずのあきらです。普段こういうのは書かないんですけどね、久々にちゃんと本を一冊読み終えて、その感想をぶちまけたくなりまして。せっかくだから記事にしてやろうかと。一応ワンクッション置いていますが当然のようにネタバレをします。対戦よろしくおねがいします。

というわけでタイトルにもある通り、西尾維新先生の(たぶん)シリーズものでない新作、「デリバリールーム」を読み終えました。ながーーい予防線を貼っておきますとですね、西尾維新先生の作品は「物語シリーズ」「戯言シリーズ」「忘却探偵」「めだかボックス」「きみとぼくの壊れた世界」をだいたい読んでます。世界シリーズはさっきあげた一冊しか読んでない。しかも途中。物語シリーズは古本をかき集め、業物語まで読んでモンスターシーズンを追っかけるのは諦めた。戯言シリーズは一応最終巻まで読んだはずだけどぶっちゃけクビツリハイスクールから先は覚えてない。人間シリーズ最強シリーズは知らん。忘却探偵は挑戦状まで家に置いてあるけど、推薦文から先を読んだ記憶がない。ファンなのかにわかなのか分かりづらいね、うん。新本格魔法少女りすか、DIOの日記、ヴェールドマン仮説、少女不十分はいつか読んでみたい。あと、暁月先生のめだかボックスと症年症女の絵が好きだったので、十二大戦も漫画で揃えたい。売ってるのかわからないけど。

はい、ここからやーっっと(多分)デリバリールームの話です。まず作品について語る前に、未読の方向けにひとつ。この本「ライトノベルあんまり読まないよ」「西尾維新知らないけどアニメの化物語くらいなら知ってるよ」という方には絶対おすすめしません。この本はあらゆる方面でえげつないので。周りくどい文体とかネーミングセンスとかでだめだと思ったら全部だめになると思う。あと、終盤のお話に西尾維新がどんな人間でどういう話書くか知ってると意識がぶっ飛ぶような展開がある。読んでみな、飛ぶぞ。












ここからネタバレ通りまーす。


さて私ここしばらく忙しく、本を一冊丸々読む機会はあまりなくてですね。最初は書店で見つけた時も「へ〜西尾先生新しい本出してんじゃんすげ〜」くらいにしか思ってなかった。しかしながら「西尾維新の最近の本って読んでなかったけど、どういうやつかなぁ」と思いながら手に取った。その瞬間、脳に電撃が走った。帯に書かれたあらすじと、さめほしさんが描いた表紙にときめいた。これは久々に倫理がおかしい方の西尾先生が見られると思い、即座にレジへ向かった。絵だけではなくそれを引き立てる装丁も美しい。ピンク色の紐の栞、いかついハードカバー、中を読み進めると現れる手紙、カバーを外すとまた別のさめほしさんによる少女のイラストが現れる。やはりこういうのがあるので本を買うときは紙派をやめられない。この豪華さで1600円税別は安いと思う。もっと金を出させろ。本を開くと戯言シリーズのように登場人物一覧が出る。妊婦のお話に合わせた、相変わらずのネーミングセンスである。主人公の「宮子」ちゃんとかそのまんまだし。物語はまず、女子中学生でありながら妊婦となった「儘宮宮子(ままみやみやこ)」ちゃんの父親である官能小説作家「秩父佐助(ちちぶさずけ)」から安全で幸せな出産を手に入れるべく妊婦同士が戦う「デリバリールーム(分娩室)」に参加するための金を巻き上げるところから物語が始まる。あーあ。初っ端からメチャクチャだ。最悪。最高。この佐助さんは最初と最後にしか登場しないのだが、一番大好きだ。西尾維新が出しがちな、自分より年下で気が強いけどあらゆる考え方めちゃめちゃな女の子にメチャクチャにされるヘタレ男性が好きなので。うふふ。間違ってはならないのが、妊婦同士で始まる頭脳戦、と大きく出ているけれど決してデスゲームというジャンルではないところ。物語開始時点での故人は現れるが、基本的に作中で新たに死者が発生する事はない。妊婦と助産婦が巻き起こす会話劇と、妊婦同士の知恵比べでこの本は構成されている。キツい下ネタと言うのがおこがましいくらい事細かに調べられている妊婦と出産に纏わる単語や話がたくさん飛び出てくるものの、そこは西尾維新。誰かが胸糞悪い不幸を一身に背負ったり、不謹慎や差別と言えるような描写は(全くではないがあからさまには)無いのだ。他の作家なら、平気で飛び越えるような。越えてはいけない一線を強固で堅牢な倫理観でしっかりと守られている。それはラストまでしっかりと続いているのだ。少なくともこの本を読み終えたとき、気分が悪くなっても消化不良で胸糞悪いままオチを迎える事はほぼ無いと思う。あるとしたら、ラストで明かされる秩父佐助の素性くらい。最初にこのオチを叩きつけられたとき咄嗟に出た感想は「おい、パパ上あなた西尾維新って名前で作家やってませんか?」だった。違うはずなんだけど、信じそうになってしまう。そして虜にされてしまう。恐ろしい。西尾維新の物語はストーリーの本筋より言葉遊びと推理、そして世界観を彩るバックグラウンドと会話劇を楽しむものだと思っている。戯言シリーズなんかそれが著しく現れてる気がする。孤島ミステリーからいつの間にか異能力バトルになっているが、読者は気にせず楽しむ。逆にこの会話劇が楽しめない人は、意味不明な急展開や唐突すぎる伏線回収で笑えなくなる。そして「俺はミステリーが読みたかったのに」「僕はデスゲームが読みたかったのに」と文句や嘆きを叫ぶ。私もデリバリールームを読んでいて、なにこれ意味わからん!と叫びたくなる場面がなかったわけではない。でも私は西尾維新の書く文が好きだ。だって、これは西尾維新という一つのジャンルで書かれたそういう物語なのだから。そーゆーもんだと思って読み飛ばしたり楽しんでいる。小説を棚に置く書店や漫画を掲載しているアプリでは「ミステリー」や「サスペンス」「学園バトル」という括りになるだろうが、西尾維新が書くというだけで世間一般のお話や筋書きとは全くの別物であるモンスターに変貌するのだ。加減しろ莫迦。こういう性格をしている嘘つきが日常生活に溶け込んでいると思うと嫌〜になる。好きだぞ(情緒不安定)。というわけで、全然語ってないかもしれないけど文字数がそこそこになってきたし語りたいことも少なくなってきたので一旦ここでおしまいにしましょうか。ここまでありがとうございました。ファンの皆様大変申し訳ございません。それではさようなら。


おまけ

色々総括した感想「妊婦で少女不十分をするな」

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