【 穴の中の君に贈る 】#毎週ショートショートnote

　学校から戻って来た俺は、靴下をポイポイと脱いで部屋で転がっていた。
実は昨日から幼馴染みの智風（チカゼ）が家に帰っていない。昨日はおばさんと、色々な所に探しに行ったが居なかった。あいつ、どこにいったんだろう。
　夕方、探しに行こうと靴下を履こうとした。ん、踵部分に穴が開いている。そこから、声がする。耳を近付けてみると、智風の声。え。スマホのライトをかざして覗くと、あ、見えた。
「智風なのか？」
「そう、俺だよ。ここは、どこだよ。ノド渇いた、腹減った」
俺は、えーっと叫んで、暫く放心状態になった。いったい何が。どうして俺の靴下の穴の中に智風がいるんだー。頭の処理が追い付かない。フッと智風の声で我に返った。
「そこ、俺の靴下の穴の中だよ。ちょっと待ってな」
俺はすぐに台所に行き、水とお菓子を持って部屋に戻った。
「智風、水をスポイトで垂らしてみるよ」
俺は、そっと穴の上から水を垂らした。智風は、頭からその水滴を被ってしまった。文句を言っているようだけど、気持ちいいと言って喜んでいる。お菓子も小さく割って、ピンセットで入れると、両手で抱えて食べている。それでも大きいと文句を言ってくる。
　その後、俺達は色々と考えたが、どうしても智風を出す方法が見つからなかった。
　ま、いいか。智風、居たし。いやいや。不意に俺は靴下を、ひっくり返した。ボンっと音がして、智風は俺の傍に転がった。　　　　　（580文字）

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皆様、ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

＊  お知らせです　＊

なるべく投稿しようと思っておりますが、暫く不定期更新になります。

今年、週間ショートショートにチャレンジでき、楽しかったです。
ありがとうございました。
お体を大切に、良いお年をお迎えください。

（画像のイラストは、ピクトアーツ様・イラストAC様よりお借りしました）
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