【 命乞いする蜘蛛 】#毎週ショートショートnote
「団長~、釣れました。生きのいい我らの食べ物が」
「おお、やったな。すぐに帰還せよ」
母星に戻ると、すぐに透明な容器に釣った物をひとつずつ入れた。
我らはその高級食材を、“ヒト”と呼んでいる。
ヒトを我らの体から出る粘着性のある糸で、がんじがらめにする。中身を溶かす液体を注入。
そして我らは、中身を吸引する。
特に青色星のヒトは栄養価が高く、美味しいと評判だ。金持ちが高値で買ってくれる。
そんなある日、隣の地区の貧しい青年がヒトを盗もうとし捕まった。
「なぜ、こんなことをした」
「体調が悪い母に食べさせようとしました」
「ヒトを盗むと言う事は、命を捨てる覚悟か」
「いえいえ、まさか。ただ母を助けたい一心で」
「命乞いする気か」
「もちろんです。僕は死にたくないし、元気になった母とまた暮らしたいのです」
「人手不足だしな。それなら、俺らの仕事を手伝え」
僕は命乞いに成功。経験値がつき、体が大きくなった。
8本ある足も太くなり、毛が生えた。
僕は一番キツいと言われている、中身が空になったヒトを処理する仕事についた。
これは、本当にキツかった。朝から虹色の液体をたらふく飲み、僕の体の中で糸を染色。
それをゴミになったヒトに巻き付け、繭のようになった糸の中で溶かす。
最後に遺伝子液を糸の中に注入し、我が星の特産品“虹色錦鯉”ができあがる。
僕は毎日、団長から渡されるヒトを持って母の元へ通っている。
(文字数:583文字)
(使用したイラストは、イラストボックス様よりお借りいたしました)
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