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月の魔法を掛けられて〜短歌と曲からショートショートdeライラックぽん💜


みゆです。

短歌と曲からぽんします😊
若干邪道な気もしますが、大目に見て下さいね。

曲を聴きながら読んで頂けましたら気分が出るかと思われます⭐

🌸 短くも美しく燃えて  稲垣潤一


では、どうぞ💛

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 「ふみか?ふみかじゃないか?」
 突然私の名を呼ぶ懐かしい声がする。低くて甘やかな私の大好きな声は今でも忘れる事はない。
 そこにいたのは、タケルさんだった。川沿いのホテルのロビーで私達は偶然10年ぶりの再会をしたのだった。

 「タケルさん。どうしてここにいるの?」
 スーツを着たタケルさんは、仕事でこの地域に来ていて今日は泊りだと言った。10年ぶりのタケルさんは、相変わらずの笑顔で私を見つめてくる。長身のタケルさんは本当にスーツが良く似合う。
 「ふみかこそどうしてここに?」
 「私も仕事で来たの。今日は私もここに泊るの」
 「夜、食事しないか?19時にここで待っているから」

 19時までしばらく時間がある。部屋でドリップパックで淹れたコーヒーを飲みながら、タケルさんの事をぼんやり考えていた。このホテルで一度だけ彼に抱かれた事がある。あれは、とても幸せな時間だったけれど、それが故に私はいつまでも彼を忘れる事ができずにいる。いっその事、雑に扱ってくれた方がすっきり忘れられて良かったのかもしれないとも思う。

+ + +

 19時にロビーに行くと、タケルさんはもうそこにいた。レストランを予約しているからと言い、最上階のレストランに向かう。エレベーターの中に二人でいると、あの懐かしい煙草の香りがする。私は煙草の香りは嫌いだけど、彼のこの香りだけは許せる。

 窓際の席に案内されて、椅子に腰掛けるとやっと少し落ち着く事ができた。タケルさんは優しい笑みを浮かべて私を見ている。
 「どう?元気でやってる?」
 「うん。元気だよ。タケルさんはどうなの?」
 「俺も変わらずやってるよ」
 他愛も無い話をしながら、私はしだいに彼に対する思いが再び湧いてくるのを感じていた。やっぱり、私は今でも彼の事が好きみたいだ。この10年間、どんなに彼に会いたかった事だろう。この瞳に見つめられたかった事だろう。この声で名前を呼んで欲しかった事だろう。そして、彼に触れて欲しかったし触れたかった事だろう。

 そんな事を思いながら、私はそれを表に出さずに食事をしワインを飲み、彼と他愛の無い話を続けていった。

+ + +

 食事を済ませた私達は、近くの公園に散歩に来ている。ちょうど桜が見ごろで、ライトアップされた桜はとても美しい。見上げると、朧月が私達を見ている。月の魔法に掛けられたように、私はタケルさんへの思いが溢れてこぼれ落ちそうだ。

 そんな私の心を見透かしたかのように、タケルさんは私を抱きしめてキスをした。彼の胸に顔をうずめた私は、全身で煙草の香りと彼の体温を感じた。

 「俺ね、ずっとふみかの事は忘れた事はなかったんだ。ずっとこうしたかったんだ」
 「私も同じだよ。あなたの事を考えない日は無かったよ」

 そうタケルさんに告げた私の心は、少しだけチクンと痛んだ。なぜなら、今の私には他に愛する人がいるから。きっと、タケルさんもそうなんだと思う。お互い、誰か別の人の事も愛している。

 だけど、もういい。ここで出会ったのは、きっと何かの運命の力と月の魔法のせいなんだろう。今は、その流れに乗るまでだ。

 手をギュッと握って歩く私達に、風に乗った桜の花びらがひらひらと舞い降りてくる。照明に照らされたそれは、キラキラと瞬く宝石のようだ。空を見上げると、やっぱり朧月が私達を見ている。霞んで光る朧月の魔法はまだ解けてはいないようだ。この先何が起こっても、それは月がさせた事。月の魔法がさせた事なのだ。

 公園を後にした私達をぼんやり月が照らしている。朧月が私達の歪な10年愛の行く末を見届けているかのように。


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今回、ぽんさせて頂いたのはこちらの短歌です⭐

💜 はるなさん

眠ってた思い出芽吹きむせかえる
タバコの香りと戸惑いのなか

💜 marutan163さん

抗えぬ朧月夜に可か不可か
歪な純愛否と知りつつ


短歌のおまとめのマガジンを眺めていたら、たくさんのステキな短歌があります。じーっと眺めていたら、この2首が私の中で引っ掛かりました。そしたら、稲垣潤一さんの曲が脳内再生されたのです。
よし、これだ!と閃いて短歌と曲からショートショートdeライラックぽん💜とあいなりました。

いつものように、頭の中で思いつくままに書き始めましたが、落としどころをどうするか決めていませんでしたので、途中でお米を研ぎに行ったりして休憩を挟みながら書きました。

曲をベースにしながら、短歌から私が感じた事を入れ込めてみました。

marutan163さんのお歌の朧月。儚げでほわんとしているけれど、月なのでやっぱりパワーも感じるのです。そんな月の力を感じてしまえば、もう抗う事などできません。

そして、占星術で月は無意識(潜在意識)や感情を現します。

そんな月の下では眠っていた思いもまざまざと蘇ってきます。彼の煙草の香りに記憶の蓋も開いてしまうのです。それは微かな痛みと戸惑いと共に…。


🧚‍♀️企画概要(4/20〜4/30)

【企画内容】
ライラック杯の参加作品(俳句・短歌・川柳)を元にして、新たな作品を創作してください。

※創作の形は小説、ショートショート、詩、イラスト、漫画、歌、動画など、なんでもあり。

※作品は複数の組み合わせを推奨していますが、1つからでもオッケーです❗️


※俳句と俳句、短歌と短歌などだけではなく、俳句と川柳など自由に組み合わせて頂いて構いません。

※数の制限はなし。

【開催期間】
4月20日から4月30日まで
※フライングOK

【必須事項】
▶︎タグ「ライラックぽん」をつけてください。
▶︎企画記事を通知がくる形でリンクを貼ってください。
▶︎引用元の作品のリンクを貼ってください。

【注意事項】
※露骨なアダルト表現等、公序良俗に反する作品は受け付けないことがあります。

riraさんの記事より

まだまだ間に合いますよ😊
あなたもぽんしちゃうんだぽん💜


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪



#ライラックぽん
#ライラック杯
#短歌
#ショートショート


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