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夢を売る仕事


私は独身の時、カーディーラーのショールームで働いていた。

新卒で入社した会社で2年が過ぎた頃、私はカーディーラーに転職した。その訳は、クルマが好きだったからだ。だけど、クルマが好きだから、という理由だけで入社したらとんでもなかった。あまりのイメージと現実との違いに、私は入社早々に求人雑誌を買い求め熟読したほどだった。その時から、結婚が決まり退職するまで、私は何冊の求人雑誌や新聞の求人広告を読んでいたか分からない程だ。

皆さんは、ショールームで働いている、といったらどんなイメージをお持ちだろうか。ショールームに座っていて、お客様が来店されたらご案内するのが仕事というイメージだと思う。もちろん、それだけが仕事のディーラーもあると思う。しかし、私がいた所は違った。大違いだった。

私がいた店舗は、まず本店だった。それが前提で話が進む。

ショールームの女性スタッフの仕事は多岐にわたる。
まずは、普通にお客様のご案内や接客の仕事。あとは経理事務の仕事。これは、拠点の経理と本支店の経理と両方がある。さらに、登録関係の仕事。これも拠点の分と支店の分の取りまとめがある。

そして、納車引取のお手伝いもする。しかも、軽ーい感じで頼まれる。
「○○ちゃん、ヒマ?ちょっと引取行くけど、いい?」
などと言って、片道30〜40分くらいの所に平気で連れて行かれる。引取に行くという事は、当然納車の時もだ。
あとは何があるだろう。細々した雑用や、お使いや、銀行に行ったりなどなど、「ちょっとした事」も仕事だった。

本店に女性スタッフは4人いたけれど、私達は本当によく頑張っていたと思う。笑顔を絶やさず、身ぎれいにし、クセの強い男性社員を上手い事あしらい。仕事も、持ち帰ったりしてたくさんした。だけど、その分みんなにはかわいがってもらっていた。

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そんな多忙極まりないショールームでの仕事だったけど、きついだけではなかった。嬉しい事も、もちろんあった。

お客様との触れ合いは、楽しい時間のひとつだ。
修理に来たお客様、クルマを買いに来たお客様。そして、近くに来たからと寄って下さるお客様。
様々なお客様との出会いを通じて、私は人との付き合い方を学んだように思う。

そして、私達が提供するサービスやクルマでお客様が笑顔になって下さるととても嬉しい。

お客様がクルマを買う時は、クルマの他にも欲しいものがあると私は思っている。

それは、モノではなく、ワクワク感だ。

ちょっと分かりにくいだろうか。
クルマは、高額な買い物だ。そして、一度買うとなれば通常は何年もの長い間乗るものだ。
そんなクルマを買う時は、お客様は吟味に吟味を重ねて、その1台を選ぶ。

車種はどうしよう。色は何色にしようか。オプションは何を付けようか。
クルマに乗って、どこに行こうか。誰と行こうか。
そんな選択は、思い切り迷う。だけど、その迷いは嬉しい迷いだと思う。
ただ、乗る事ができればいいという様なものではない。

そのクルマがもし、本当に業務用だけの物にしても、やはり選ぶ時には多少の嬉しい迷いはあるものと思う。仕事で乗るのにも、やはり快適に、少しでも楽しく運転したいと思うからだ。

そんな嬉しい迷いがワクワク感に通じるのだと思う。
注文をして、納車までの間にワクワクしてたまらないのだと思う。
納車の日、来店のお客様には、お花を差し上げて納車式をし、記念写真を撮った。そんな時、お客様は笑顔があふれていた。私達スタッフも、そんなお客様を見ていると笑顔が浮かんだ。

そして、車の修理などで入庫して元の状態に戻った時。そんな時、お客様に頂く「ありがとう。助かったよ」の言葉。そんな時私達は笑顔が浮かんだ。

お客様の嬉しそうな顔を見ていると、私は笑顔になった。
きつい事もあるけど、この仕事を選んで良かったと思った。

私は、ディーラーにいた頃、新聞やタウン誌のちょっとしたインタビューを受けて、記事にしてもらった事がある。
その時に、「このお仕事についてどう思いますか?」と聞かれた。私はインタビュアーの方にこう答えた。

「ここでの仕事はクルマを売ったり修理するだけではありません。私達の仕事は、夢を売る仕事です。そんな時のお客様の笑顔が一番の宝物です」






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