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あいの重み【才の祭参加】

 ここは、みゆちゃんのお家のこたつの中。
 くーちゃんときーちゃんは、ひそひそと話をしています。いったい何を話しているのかな?

 「もうすぐ、人間界ではクリスマスというものがくるみたい。」
 「くーちゃん、クリスマスって何?」
 「よく分からないけど、クリスマスにはごちそうを食べて、プレゼント交換をするみたいだよ。」

 プレゼント、という言葉を聞いたきーちゃんは、くーちゃんに言ってみました。

 「ここは、あたしたちから、げぼくにプレゼントしない?」
 「そうね。げぼくに施しをするのは主人の務め。釣った魚にもエサをあげないといけないしね!」
 「プレゼント、何がいいかなぁ。」

 この二匹の猫、くーちゃんときーちゃんは謎の秘密結社「ぬこぬこネットワーク」から派遣された猫たちだったのです。そのかわいさで、みゆちゃんをメロメロにさせて、げぼくにさせてしまったのです。


 一方、みゆちゃんはというと。
 猫たちと同じこたつに入り、SNSを見てはため息をついています。

 「どうして、よその猫さんはこんなに飼い主さんにデレデレしてるんだろう。うちの猫さま方ときたら・・・。」

 くーちゃんもきーちゃんも、みゆちゃんに対してちょっぴり塩対応をしていたのです。みゆちゃんは、それが寂しくて仕方ありませんでした。いったいどうやったら、よその猫たちのようにデレデレしてくれるのか考えていました。

 もうすぐ、クリスマスが来ます。みゆちゃんは、二匹にプレゼントをあげようとネットを物色しています。おや、何かいいものが見つかったみたいです。にこにこしながらカートにそれを入れました。


 クリスマスイブがやって来ました。

 くーちゃんときーちゃんは、みゆちゃんへのプレゼントの打ち合わせに余念がありません。みゆちゃんに何をプレゼントするのか楽しみですね。

 ♪ピンポーン

 宅配がきて、何やら荷物が届きました。大きな箱と、小さな箱。
 みゆちゃんは荷物を受け取ると、梱包を解き、ドライバーを手に組み立てを始めます。何ができあがるのかな?

 「できた!くーちゃんときーちゃん、来て!!」

 できあがったのは、キャットタワーでした。3段の大きなキャットタワーです。それなのに、二匹ときたら。キャットタワーが梱包されていた段ボール箱で遊び始めます。それを見たみゆちゃんは、がっかりしてしまいました。

 せっかく、キャットタワーを献上したのに。くーちゃんもきーちゃんも私の事、好きじゃないのかな・・・。寂しいな。


 その日の夜。
 クリスマスイブなのに、みゆちゃんは一人でごはんを食べています。いつものごはんと違うのは、チキンとケーキがある事だけ。それに、飲んでいる物が今日はワインな事だけです。

 みゆちゃんは、ワインを飲みながらぼんやりテレビを見ています。

 「なーんで私、こんな日に一人でいるんだろ。猫さまも冷たいしさ。神も仏もあったもんじゃないわ。」

 そう独り言を言うと、グラスに残ったワインを飲み干しました。

 その時です。みゆちゃんは膝に重みを感じました。なんと、くーちゃんときーちゃんがみゆちゃんの膝に乗ってきたのです。みゆちゃんはビックリしました。

 「え、え、え?何、何、何?どうなってるの?」

 ずっしりとした重みを膝に感じながら、みゆちゃんは驚きを隠せません。今まで、こんなにデレデレしてくれた事は無かったからです。しつこくまとわり付くのは、ごはんが欲しい時だけだったのに。

 今は、合わせて9キロの重みを膝に感じているみゆちゃん。あいの重みが嬉しくてたまりません。

 「ああ、これが噂の石抱きの刑なのね!」

 くーちゃんときーちゃんは、みゆちゃんの膝の上で顔を見合わせます。

 「げぼく、あたしたちのプレゼント喜んでくれたみたいだね。」
 「そうね。これからは少しはデレデレしてあげるのもいいかもね。」

 その後は、みゆちゃんにもう一つのプレゼントの高級カリカリと、ちゅーるを貰ってご機嫌なくーちゃんときーちゃんなのでした。

 お外は雪が降ってきました。寒い寒い夜です。一人と二匹は、同じお布団でくっついて眠りました。みんな、どんな夢を見るのかな?


おしまい


⭐PJさんの企画「才の祭」の小説部門に参加しています⭐

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