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【シロクマ文芸部】ずっといっしょにいたいから


 「消えた!!鍵が!!車の鍵!!」

 サナさんはさっきから車の鍵を探しているの。あたしはそんなサナさんを横目で見ながらソファの上で香箱を組んでお行儀よく座ってるんだ。あ、サナさんっていうのは、あたしのお世話係の女の人よ。犬の世界では飼い主っていうらしいんだけど、猫の世界ではお世話係っていうの。

 「もうヤダ。鍵どこいっちゃったの?もう遅刻しちゃーう。スペアキーもどっかいってるし」

 サナさんは大きな声でぶつぶつ言いながら、部屋の中のあちこちをバタバタと走り回っている。でもね、あたし鍵のある所を知っているの。あたしの寝床の猫ベッドの中に入ってるんだ。そう、あたしが鍵を持っていっちゃったの。だけど、ひとつ弁明しておくと、スペアキーが無いのはあたしのせいじゃないから。それは、サナさんがどっかやっちゃったんだと思う。

 いけない事だって分かっているよ。サナさんを困らせちゃダメって分かってるけど。でも、あたし寂しいんだもん。サナさんはお仕事に行くと遅くまで帰ってこないから、あたしずっとひとりぼっちなんだもの。もっとサナさんと遊びたいし、かまって欲しかったの。

 サナさんは、あたしの方を見ると頭を撫でてくれたんだけど、その顔はとっても悲しそうだった。
 「ミルクさんは鍵、知らないよね?知る訳ないか……。ほんとどうしよう。今日は大事な案件があるから、準備する事があるのになぁ。タクシー呼ぼうかな」

 あたしはサナさんに毛繕いしてあげた。すると、サナさんはまたあたしの頭を撫でてくれて、喉もさすってくれた。あたし、悲しそうなサナさんを見ていたらたまらなくなって、寝床に走っていったんだ。

 鍵を口にくわえてサナさんの所に戻ると、足元に鍵を置いてあげた。鍵に気付いたサナさんは毛が付くのもかまわずにあたしを抱っこしてくれたの。
 「ミルクさん!!鍵!!見つけてくれたの?ミルクさん、ありがとう。ほんと助かったぁ。さすがミルクさんはわたしの救世主だわ」

 何も知らないサナさんは、あたしから鍵を受け取るとバタバタと準備を済ませて、バタバタとお仕事に出掛けていった。
 「ミルクさん、ありがとう!!仕事に行ってきます。帰りにちゅーるたくさん買ってくるからね」

 やれやれ。ほんとはサナさんと一緒に過ごしたかったのにな。サナさんが帰ってくるまで何してようかな。つまんなーい!
 でも、サナさんがお仕事をしてお給料をもらってこないと、あたしもゴハンが食べられないから仕方ないかぁ。帰りに買ってきてくれるちゅーるが楽しみだな。

 あたしはもうひと眠りする事にして、あくびをしながら猫ベッドまでゆっくり歩き出した。


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小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「消えた鍵」です。

消えた鍵、ファンタジーやミステリー仕立てにすると面白そうと思いましたが、いかんせんストーリーが浮かびません!!
私は良くも悪くも、等身大というか自分の想像できる範囲でしか文章を紡げないんだなぁという事を思い知りました。変幻自在に様々なお話が書ける人がうらやましくて仕方ありません😢

このお話の猫の飼い主をサナって名前にしました。そのおかげか、この名前の人の事をちょっとだけ思い出しました。
昔、パソコンのOSがWindows98とかMeの頃。
私が出入りしていたチャットルームにサナって子がいました。たしか、まだ高校生とかじゃなかったでしょうか。
私は特別サナと親しくしていた訳ではありませんが、ちょっと不安定な印象を受けた子でした。メンヘラではないと思うのですが、今でいうところの中2病みたいな。
あれから20年以上経ったから、サナももう40くらいかな。普通に元気にしているのかなぁなんて事を思ったのでした。
サナの事は今まで思い出しもした事なかったのですが、登場人物の名前からふいに思い出してしまいました。



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