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恋愛小説

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#ホラー小説

憑く香り

憑く香り

  *

 たたた、たたたん。

 もう何百回目になるだろう、鳴り続ける着信音を聞きながら、俺は苛々と頭を掻きむしった。

――何で出ないんだよ、クソッ!

 舌打ちして電話を切り、床へ投げつけたい衝動を必死に抑える。

 同じテーブルに着いたパートのおばちゃんが眉をひそめてこちらを見ているのに気づいて俺は無理やり愛想笑いをした。また、会社を辞める羽目になったら叶わない。

 ――畜生。美枝子のヤ

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甘い酒

甘い酒

その店に入ったのはほんの偶然だった。

出張で訪れたとある町の、駅裏の寂れた飲み屋横丁にある小さな小料理屋だ。営業しているのかも分からないスナックや古いラーメン屋などが並ぶ狭い路地は、恐らく、普段から人通りも少ないのだろう。駅を出た途端の急な大雨で、ホテルに戻るまでの雨宿りのため飛び込んだ適当なのれんの中には、自分以外に客の影はなかった。

「いらっしゃい。お客さん、初めてね」

テーブルがひとつ

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