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#1 【日本の音楽とK-POPは、何が違うのか?リズムのプロがJ-POPを徹底分析】

はじめまして。25歳から海外でプロドラマーとして活動し、海外の5つ星ホテルやJazz/Bluesフェスティバルで演奏したり、🇺🇸グラミー賞受賞アーティストと共演してきた Miyukiです。

今回は、日本の音楽とK-POPの違いについて、リズムの観点から考察していきましょう。音楽で世界進出したい方、K-POPの素晴らしさを深く知りたい方、J-POPが世界に出るヒントを探している方、リズムの奥深さに興味がある方におすすめの内容です。

さて、昨今世界中で人気のBTSをはじめとするK-POP。同じアジア発祥の音楽ながら、J-POPとはいつの間にかこんなに違いができてしまったのでしょうか。

ライブ配信やファンコミュニケーション、マーケティング手法などの分析はされていますが、今回は世界で認められた「K-POPのリズム」に焦点を当ててみます。

▼その①/MiUkiの活動について***********************************************************************
私は、25歳の時から海外で本格的にプロドラマー活動をスタートし、アメリカン・ルーツミュージックのメイン・ドラマーとして、世界60カ国のアーティストと共演してきました。総勢10万人以上の観客の前で演奏する中で、国や人によってリズムの捉え方が全く異なることに気づきました。そして、現在、その国際リズム感覚の言語化に取り組んでいます。

▼世界の音楽のリズムをつかむ**************************************************************
さて、「世界で認められるリズム」を知るために、ミュージシャンの出身国によってリズムの取り方が大きく異なる。という点について話をしていきましょう。

例えば、アフリカ系アメリカ人のパーカッショニストが奏でるリズムは非常に複雑で、私がそれを習得するのに半年もかかりました。さらに興味深いことに、例えば、イギリス、オーストラリア、フィンランド、スペイン、キューバなど、それぞれの国の音楽家たちは、独自のリズムを持っています。

これは、言語、文化や伝統がリズム表現に与える影響の大きさを示しています。

そうして、各国のミュージシャンと演奏を重ねるうちに、「音質」「音の長さ」「音の芯」の3つの要素がリズムを作り出していることが分かってきました。

言葉で表すのは大変難しいのですが、例えば、アフリカ系のリズムは、

3拍子→タタタ タタタ タタタ
※日本ではこう習う

ではなくて、

3拍子→タッタッタッ゙ タッタッタッ゙  タッタッタッ゙ 
※最後のタッ゙ は他より短く切らないといけない

だとピッタリ。


イギリス系ブリティッシュ・ロックなどは、スネアの「音の芯」の位置がグッと前に押し出されており、さらに「音の長さ」も短め。前に突き出すようなリズムになっています。

これは、ブリティッシュ・ミュージックのルーツである、アイリッシュ・ミュージックの影響を強く受けているからです。

(アイリッシュ民謡"Gaelic Storm Irish Party in Third Class + John Ryan's Polka"のスネアの位置を聴くとわかりやすい)

私はステージに立つたびに、各人のリズムが奏でる「音質」「音の長さ」「音の芯」の細かな違いをステージ上で体感し、自分の身体を細胞レベルで調整しながらグルーヴを組み立ててきました。

▼世界の音楽のリズムはサイレント・ビートを知ることから**************************************************************
アフリカ系音楽の3拍子→タッタッタッ゙ であったり、ブリティッシュ音楽の前に突き出すようなリズム。

その違いは、サイレント・ビートとも呼ばれています。私は「音と音の間の音」と、訳しています。「音質」「音の長さ」「音の芯」、つまり、「音と音の間」をどんなリズムで捉えるか?ということは、音楽の究極を唱えているようで、実は基本でもあり、演奏者や作曲家にとっては当たり前のことでもあります。

→※ちなみに、そのころ共演してたのはシカゴブルースの巨匠マジック・スリムです。(個人のリズム差が大きいシャッフル、スィング、3拍子の嵐。日本人が最も苦手とするリズムです。)


▼日本の4拍子(4ビート)文化
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さて、J-POPのリズムはどうでしょうか。

日本の音楽は、主に4拍子のリズムパターンで成り立っていると考えています。4拍子のリズムとは、上から力強く打ち付ける「タテノリ」のビートが一般的で、演歌の節回しや和太鼓、盆踊りなどにも見られるリズムです。4拍子のリズムは少しズレても修正がきくのが特徴です。

日本の音楽といえば「演歌」
→こぶしを効かせて歌いますよね

日本の打楽器といえば「和太鼓」「木魚(お経を唱えるときに使う)」
→ドンドンポクポク

日本のダンスは「盆踊り」
→炭坑節が好きアー〜ヨイヨイ


どれも「ドンドン」上から下に打ちつけるリズムです。
(田植えの動作も「上から下」に向かって苗を植えますよね)

例えば、以下を比較すると分かりやすくて

4拍子

ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!

3拍子

タタタ ウッタ ウッタ ウタタ

4拍子は、リズムの間に余白があるので少し後ろにズレても次の音への影響が少ない。一方、3拍子は、リズムの拍数が多くて独特の「ハネ」があるので一度ズレると調整が難しい。

J-POPのリズムは、Jazzを演奏しても4拍子のビートが聞こえてきますし、R&Bでも、Hip-Hopだとしても、4拍子が強いんです。

世界の音楽で使われる「3拍子、8拍子、16拍子の細かいノリ」を体得した自分にとっては、細かい「音の長さ」や「音の芯」の位置がちょっとでも合っていないと拒否反応が出るので、洋楽ジャンルのJ-POPの音楽が一切聴けなくなってしまいました。

こうして「Jpopが聴けなくなった。。」というと、特殊能力を持った宇宙人みたいに聞こえるかもしれないんですが、実はこれが欧米の方々がJpopを聴いたときの感覚でもあるんです。

実際、欧米人の知人を日本の音楽のライブに連れて行っても、すぐに帰りたがることがありました。

さらに専門的な領域に踏み込むと、これには言語リズムが大きく影響しています。

▼言語リズムの影響
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欧米人は「リズム重視」かつ「8拍子」です。

日本語の「音の高低」かつ「4拍子」です。

これが、欧米人の耳に日本の音楽をずれて聞こえる原因で、ナンカチガウ!の要素になっています。(あとは周波数の違いも影響しています)

では、欧米のリズムに日本語歌詞を乗せるとどうなるか?

そこで、日本的ビジュアルと音楽の融合で、日本独自の魅力をプロデュースした中田ヤスタカさんについて分析してみます。
→きゃりーぱみゅぱみゅ、Pafumeは世界で大人気ですよね!

Pufumeさんは、日本語が持つ4拍子のリズムを消すために「ウィスパーボイス」「ハモリ」「語呂のいい言葉」で日本語の持つ独特のリズムを消して、完璧な欧米系リズムに寄せています。

その他、最近アメリカビルボードチャートにも入っているBaby Metal、アニメのサントラ(攻殻機動隊など)も、この欧米リズム+日本語歌詞で世界チャートに出ています。

この「日本語歌詞+欧米寄り楽曲」のアーティストを探っていくと、日本人アーティストが世界を取るための「音楽視点の解」も見えてきます。
→BTSまであと少しです!

▼「日本語歌詞+欧米寄り楽曲」の組み合わせ*************************************************************************
海外で活躍している日本人アーティストとして、その代表格なのは「上を向いて歩こう」坂本九さんです。

米ビルボード総合チャート「シングル1位」かつ「アルバム14位」と最高位を記録しています。
#ピコ太郎のPPAPは77位  

(裏話)
この曲のヒットには色々な背景があるようですが、大きなキッカケは「アメリカのラジオDJ」が、偶然、坂本九さんレコードを手にして曲を流したところ、リスナーから大反響があったそう。

坂本九さんの歌の才能が素晴らしいのですが、曲調を「テンポ遅め」にして、「メロディをゆったり聞かせる」ことで、欧米系の「シンプルなメロディ」に寄せたことも、ひとつの要因じゃないかなぁと思います。
#J-POPは一般的にメロディが複雑なんです

▼「日本のアニメ×音楽」の組み合わせ*************************************************************************
また「日本のアニメ×音楽」の組み合わせも見ていきましょう。
久石譲さんの「千と千尋の神隠しサントラ」が米ビルボードチャート74位「攻殻機動隊」が2004年BillboardHeatseekers Albumsチャートで4位「新世紀エヴァンゲリオン」も同チャートで1997年で4位にチャートインしています。

中でも、攻殻機動隊のサントラは、確実に世界取るためにプロデュースされており、欧米風の「シンプルなメロディ」で「リズム重視」の作編曲にして、確信犯的にチャート入りしています。

→その裏側では、「メロディがシンプルで単純すぎるんじゃないか?」と、このアルバムに関わった日本人作家さんから反発があったそう。
#複雑なメロディは日本音楽の強みですからね

▼メタル系バンド、インスト、伝統音楽分野*************************************************************************メタル系バンドも世界で活躍していて、最近は「Baby Metal」が米ビルボードチャート「アルバム部門39位」に入りました
#メタルはタテノリなので4拍子の日本人と相性がいい

Baby Metalのような「アイドル×音楽」の組み合わせだと、他にもきゃりーぱみゅぱみゅ、Pafumeなどがいます。
→「ビジュアル系バンド×音楽」の組み合わせでも世界に出ています!

▼日本人アーティストの世界での戦い方から分かるBTSのすごさ

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ここで一旦まとめると、日本人アーティストは、

【「日本独自の文化」×「世界(欧米系)音楽」のセット売り】

または、

【海外(欧米系)アーティストと共同して、世界のフィールドでクオリティ一発勝負!】

上記のどちらかで、日本は世界に勝負をかけてきたんですね。

そして、ここから先は、個人的な見解なんですが、「AI作曲」が台頭した日には、ほとんどの音楽が欧米リズムになる可能性が高い。なので、世の中の音楽ビートや楽曲が「洋楽に偏り」を見せるようになるでしょう。
→AIは数をこなして学習するため、世界のヒットチャート(欧米系リズム)が優位になる

なので、AI作曲の「次の次の時代」に輝くのは、「個性」がある音楽や、音ムラのある「人間が演奏する」音楽が重宝される時代が来るでしょう。
#回る回るよ時代は回る

その時は日本式の【「メロディが複雑」×「日本のちょっとズレてるロックやポップス」】が、世界中で「おもろい!」ってなる可能性もある。

つまり、「日本エンタメで世界を取りまくる」ためには、

「世界(欧米系アーティストと共同」でクオリティ一発勝負」で戦いつつ、「日本文化世界(欧米系)音楽」のセット売りをしながら、
「ザ・Jpop文化を海外文化の流れから保護しておく」この3つの柱がキモになってくると考えます。
#マカロニえんぴつなど曲から映像が浮かぶ日本らしいバンドって最高だよね

ということで、長くなってしまったので、記事を分けて、
K-POPやBTSが実践した【「世界(欧米系)アーティストと共同」してクオリティ一発勝負!】をK-popのリズムに言及しながら音楽的に掘り下げてみます!


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