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フィンランド留学記#9 サンタさんに会ったよ

ロヴァニエミは、わたしが留学していたオウルから電車やバスで2~3時間ほどで行くことができる、もっとも近い観光スポットだ。わたしは10カ月の留学期間で、3回はロヴァニエミに行ったと思う。そのうち2回は、フィンランドまで遊びに来てくれた日本人の友達とサンタクロース村に行くため、もう1回はアークティック・プライドに参加するためだった。中でも、最初にロヴァニエミに行ったときのことはよく覚えている。

10月Kちゃんがオウルに来てくれたときに、フィンランド人の友達・サムくんが、車を出してくれて、3人でロヴァニエミに向かった。

到着してまず驚いたのが、地面に北極圏を表す線が引いてあること。地図であんなに北に描かれている場所に自分が立っていると思うと、なんだか感慨深かった。その線の上にいくつかポールが立っているのは、雪が降っても北極圏の境目が分かるためだと、2回目に行ったときにわかった。

建物内に入り、サンタさんに会うために列に並ぶと、わたしたちのすぐ後ろに、手紙を持ったフィンランドの子どもたちが並んだ。自分も小さい頃、サンタさんに欲しいもののお願いや、プレゼントのお礼を手紙に書いて枕元に置いていたっけ。子どもがサンタさんに会いたい気持ちは、万国共通なんだと思うと同時に、フィンランドの子どもたちはこうして実際にサンタさんに会えるから、その存在に疑念をなかなか抱かないだろうなと思ったりもした。

いよいよ順番が来ると、ぶわーっと嬉しい気持ちがあふれて、わたしたちは子どもに戻った。サンタさんがわたしとKちゃんに、「あなたたちはどこに住んでるの?」と英語で聞いてくれ、それぞれ「オウルです」「○○(日本の地名)です」と答えると、「じゃあ2カ月後に、あなたにはオウルで、あなたには○○で会いましょう」と微笑んでくれた。日本とフィンランドは遠く離れているけれど、それでも可能かもしれないと思えるくらい、サンタさんにはわたしたちを信じさせる力があった。わたしたちは、本当にサンタさんに会ったよ。

あったかい気持ちに包まれたまま、わたしたちはクリスマスカードを申し込んだ。Kちゃんは家族に、わたしは自分にサンタさんからクリスマスカードが届くように。わたしは、クリスマスを一人さびしく過ごさなくていいようにと思って、自分宛にしたのだけれど、当日届いてみると、もったいないことをした、誰かと分け合いたかったととても後悔した。3年経った今でもそれが忘れられない。

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