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フィンランド留学記#17 2つのオーロラ

初めての経験やものごとの始まりは、記憶に残りやすい。

フィンランド北部の街・オウルに留学していたわたしは、10カ月の留学期間中に何度かオーロラを見ることができた。なかでも、人生で初めて見たオーロラと、その翌日に見たオーロラのことは、はっきりと覚えている。

10月6日、1つめのオーロラ

人生初のオーロラは、デルフィンと住んでいた、シティセンターの家の窓から見たオーロラだ。

それまでにも、うっすらと白いオーロラのような影のようなものを見たことはあったけれど、こんなにも明るく鮮明なオーロラを見たのは、生まれて初めてだった。何より、家の中から、お風呂上がりのTシャツ1枚でこの絶景を眺めることができた、贅沢さに胸がおどった。

そういえば、デルフィンと暮らしていたときは、オーロラを見つける度に「今日はnorthern lights 出てるよ!」と教えあっていたっけ。オーロラが出ると、お互いの部屋を行き来して、見やすい方の窓から2人でオーロラを眺めていた。

10月7日、2つめのオーロラ

人生初オーロラの記憶もまだ新しい翌日、2度目のオーロラを見ることができた。

大学近くの、日本人の先輩が住む寮に遊びに行った日のこと。手作りのご飯を食べて、話し込んで深夜、シティセンターに帰る終バスに乗るべく、歩道を走っていたときだった。

前日に見た、遠くに、でもはっきりと見えるオーロラとは違って、とにかく近くに巨大に、そして揺らめいて色が変化していくように見えるオーロラだった。日本人留学生のMちゃんと、少し酔っ払っているのにまかせて、笑いながら上を向きながら走った。あのときのワクワクした高揚感を、いまも思い出すことができる。

オーロラの中でも、黄色や赤は、相当オーロラの光が強くないと見ることができない珍しい色といわれている。この日に見たオーロラが、留学期間全体を通して最も強いオーロラだったかもしれない。

こんなにも、ドキドキして感動した、人生最初の2つのオーロラのことはよく覚えているのに、それ以降に見たオーロラの記憶は驚くほど薄くなってしまっている。初めての経験は記憶に残りやすいことを実感するとともに、慣れによる感覚の鈍化はおそろしい、と思う。

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