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苔むした深い緑色の世界、そこがわたしが生まれ育った場所だった。 母が気を付けるよう何度も言った底なし沼、そこでわたしたちは毎日のように泳いだ。母がそう言うのは、わたしがまだ幼い頃に父がオオナマズを捕えようと潜り、毒ヒルにやられて亡くなったからだ。 湿地は毎年のように広がるため、わたしたちグループは度々居住地を移動した。迷路のような樹林はわたしたちを守り、同時に閉じ込めるように、おそろしい勢いで深みを増していた。それでもわたしたちグループは樹海エリアを選んで生きていた。 旧
薄暗く広大な講堂の壁は液状ガラスになっていて、目下には新都市の全貌が確認できる。光景だけではなく都市内のすべてのエリアにおいて、どの№のストリート、裏路地にいたるまでモニターできるスクリーンが備わっていた。男は冷たい暗がりからその空間とは比率的に不自然なほど狭いドアをくぐり、階段をぐるぐると産道を通るように風のあたる踊り場へと出た。 ひかりに細めた目の灰色の虹彩は崩れたように淡く大きく、遠くまで続く乾いたストリートを一望する。 男は名をテジロといった。 彼の目はその情景に、
きざしはもう 見えていた。 空は厚い灰色の雲が一面にとぐろを巻き、生き物の生息地を一日一日飲み込んでいた。小さな芽吹きは草地をはぐくむ間すら与えられずにもみ消され、嵐は続いた。 太陽を見ないときがどのくらい続いただろう。 生き物のほとんどは死に絶え、残ったものたちは岩陰に身を潜め、そのいのちを耐えていた。 人間は、嵐とともに消えていったもの、自ら悲観して終えていったもの、生き残れど本能が占めてしまったもの、、、生き、強いられた忍耐をもって思考力を保っていられたものは
真っ黒な雲が降りてきて 山を隠し 心細げに見やる窓の外 雨風が渦を巻き 街すらも姿を消した 雷は狂暴な龍となって飛び交い 幾筋も地に飛び込んでは轟き 押し寄せる土色の川は殺気をこめ 流しつくさんばかりに迫る 朝の光景 それでもこの目は さっき見せつけられたあの青に囚われていた 港 どこまでも深く宇宙へ降りてゆくような 空の青 それに溶け込む月が見ている あたりの空気にすら生気が満ち 風が立ち どこまでも軽く 透明になっていった 雲が水晶のような
いつだったかはるかむかしのこと。ひとの、星々の民とこのそらをともにしていたときのこと。 世の混じり乱れたときも終わり、しずかなしずかな時代の明けようとしていた。 夜明け前の空の青は濃く、やわらかく、星々はありありとその存在を無言で輝かせていた。 森で築いてきたこれまでのあり方そのすべてを失い、部族の民もその大方を亡くし、新しい時代を前にただぽかんとひらけた自由だけがあった。 のこった女たちはかましく、たがいにかたときも離れないほどだったため、気の細く無口な青年は居場所
結晶だ・・・ 深いブルーグリーンに光る石をわたしは拾いあげた。完璧な球面を成し、指先にすりガラスの玉のように触れる、この珍しい石はところどころぽつぽつと落ちていた。鍾乳洞化した道全体が真っ白な淡いひかりに満ちているため、それらは生み落とされた種のようにも見えた。 わたしはキョロキョロしながらネーサの後についていく。 わたしたちメンバーは、死にかけようとしているこの星での役目の最終段階に入ろうとしていた。そのため彼女は気を引き締め、さらに背筋をのばしていた。 白