あの空の青へ


真っ黒な雲が降りてきて  山を隠し

 

心細げに見やる窓の外 雨風が渦を巻き 街すらも姿を消した


雷は狂暴な龍となって飛び交い 幾筋も地に飛び込んでは轟き


押し寄せる土色の川は殺気をこめ 流しつくさんばかりに迫る


朝の光景


それでもこの目は さっき見せつけられたあの青に囚われていた



どこまでも深く宇宙へ降りてゆくような 空の青

それに溶け込む月が見ている


あたりの空気にすら生気が満ち 風が立ち どこまでも軽く 

透明になっていった


雲が水晶のような結晶となって 海の上に音もなく落ちた

躍動感を胸に わたしたちは広がる時間を冒険しているようだった


ひとりが指さした先に


巨大な入道雲のようにしてわきあがった 幾何学的な構造の一隻の船


山のように巨大な船であり 街でもあった

その出会いの祝福に 

小さな船たちは遊離した電子のごとくちらちら飛び交い


空はますます喜びにみちた


わたしたちの半分くらいは特に気にも留めず


ほかの半分くらいは涙しながらそれを迎えた



土砂降りの雨と避難勧告放送の不気味な音で目覚め


その世の重さに唖然としつつも


出勤しゆくややもうろうとした人々の流れのその奥


あの目的地もさだかでない狂わんばかりの濁流を見つめ


その遠く  あの透化した宇宙の青を おもう



2014.8.14



https://www.flickr.com/photos/planetmyk/galleries/72157644461717914/