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ひとのゆめみのちからともりしとき
いつだったかはるかむかしのこと。ひとの、星々の民とこのそらをともにしていたときのこと。
世の混じり乱れたときも終わり、しずかなしずかな時代の明けようとしていた。
夜明け前の空の青は濃く、やわらかく、星々はありありとその存在を無言で輝かせていた。
森で築いてきたこれまでのあり方そのすべてを失い、部族の民もその大方を亡くし、新しい時代を前にただぽかんとひらけた自由だけがあった。
のこった女たちはかましく、たがいにかたときも離れないほどだったため、気の細く無口な青年は居場所なく、遠くはなれようと考えていた。もうどこへ行って身を成り立たせようが自由だった。
( いや いや きみはのこるべきだ
だいじょうぶ 彼女らのことなら
宇宙とは拮抗するものどうしがあって成り立つもの
きみは彼女たちといるべきだ )
男が穏やかに青年を諭した。
彼は混乱の少しまえから部族のまえにあらわれた旅人だった。
誰かが彼は星から来たものだと言ったのは、星空のようなその穏やかさだけではなく、いつも必要なときにふとあらわれては部族の民に不思議な知恵を与えたからだった。
彼が何者であろうが、青年は彼が好きだった。
どんなに頭の混乱するようなことが起こっても、彼のそばにいるだけでこころが安らいだ。何も話さなくとも頭のまとまって静かになった。
彼のまわりだけ大きくゆったりとした不思議な時の流れていたからだ。
青年は旅人のひとことで残ることをすんなり決心した。しかし青年はまた旅人にものこっていてほしいと強く願っていた。旅人はこの地を去ろうとしているようだったので、青年はそれを心配した。
新しい時代の始まりに、彼はあたかも見守りの用の済んだようにそこを去るつもりでいた。しかし森のなかでこの世界の微生物の興味深いパターンを見つけ、観察のためしばらくのこることにしたのだった。
青年は大変に喜んだ。
青年と女たちは、森をはなれ、少し出たところの見晴らしのよい笹野に落ち着くことにした。
それはすべてが新しい試みだったが、ともにちからを合わせ、ひとつひとつ築きあげられていった。
家という木々の代わりの拠りどころを組むこと。水のこと。新しい食料のこと。蓄えるということ。すべてがこれまでと全くちがう、試行錯誤の日々だったが、しだいに彼らには ‘ 未来を夢見る ’ という希望の輝きをその目にうつすようになっていった。
ひととしての眼差しを持ち地に自ら根づいていった。
旅人もそこで暮らした。 彼はいつもおだやかに微笑んでいた。
穏やかでやさしいときだった。
苦労をよそに、青年にはすべてが満足だった。
ある日、ときがきて、旅人は青年たちのまえから忽然と姿を消した。
まるで仮の姿をそっと脱いで、青年たちの目に見えなくなったように。彼のまとっていた悠久の時間へ帰って行ったように、、、消えた。
青年たちはこころぼそくなって、とても悲しんで、長いこと泣きくれた。
ひとが、ゆめみのちからを持った時代のはなし。