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あの名曲「ラ・カンパネラ」が生まれた背景には、意外な秘話があった…

クラシック音楽愛好家のみならず、誰もが一度は耳にした事がある名曲中の名曲。ピアノの魔術師と呼ばれ、超絶技巧で知られるフランツ・リストが作曲した「ラ・カンパネラ」である。今や彼の代表作として語られる事も多いこの曲の背景には意外な誕生秘話があった…

もとのメロディはリストによるものではなかった

そもそもあまり知られていないのが、この作品のメインテーマであるメロディ部分はリストによるものではないという事。「鬼のヴァイオリニスト」としてリストと同じように世間の注目を集めていたニッコロ・パガニー二のヴァイオリン協奏曲第2番第3楽章の主題であり、それをピアノ作品に取り入れたいわば編曲である。

リストはパガニー二の演奏を生で聴き、そこで受けた衝撃と感動を表す意味でも彼の技法と音楽の魅力をピアノで再現したかったのでしょう。ヴァイオリン協奏曲やカプリースといった代表作の主題を次々とアレンジし、誕生した中の一つがリスト作曲「パガニーニによる大練習曲集」であり、有名なラ・カンパネラはこの曲集の第3曲目として書かれている。

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ラ・カンパネラは演奏会用の作品?

上にあるようにラ・カンパネラが含まれる作品集の題名は大練習曲。一般的に練習曲「エチュード」とはその名の通り練習をするための作品であり、本来ならば人前で、ましてや演奏会で弾くものではない。しかし「大練習曲」という表現によって曲の偉大さが強調され、実際どの作品もかなりの難曲である事からリスト自身や彼の弟子たちもコンサートで実演し、今日もコンサートのプログラムに選ばれるようになったのだ。中でもラ・カンパネラはその独特な作風で人気も高く、もはや練習曲の枠を超えた立派な演奏会用作品とも言えるでしょう。

タイトル「カンパネラ」の意味

カンパネラはイタリア語で「鐘」という意味を持ち、イタリア人であるパガニーニが鐘の響きを表した題名である。リストはそのタイトルを強く意識したのか、ピアノの高音部でそれを再現し、より鐘の音を印象付けた。どこか物悲しさもさえ感じられる冒頭から、まるで違ったテイストの後半への盛り上げ方はリストならではの曲の構成とも言える。ここが、この作品が長年聴衆に愛されてきたポイントの一つなのかもしれない…

リストはなぜ編曲をしていたのか

超絶技巧やアイドル的な一面が取り上げられる事の多いリストだが、僕が彼の祖国でもあるハンガリーに留学し、彼が創立した音楽院で学んだ「リスト像」はまるで違っていた。

ピアニスト、作曲家としての活動だけではなく、音楽家として、芸術家として、社会人としてそして教育者として常に時代の先端に立ち様々な事を手掛けてきたリスト。いくつかの例にすぎないが、ピアノリサイタルというコンサート形式をはじめて行う他、ピアノという楽器を成長させ、学校を立ち上げ、文学、哲学、宗教学を学び、ヨーロッパ中を旅し、各地でチャリティーコンサートを開催し、今で言う外交官のような役割も果たすなど、活動の幅は無限だった。

そんな彼は定期的に編曲をしていた。パガニーニの作品の他にもバッハのオルガン曲、ベートーヴェンの交響曲、シューベルトやシューマンの歌曲、ヴェルディーやワーグナーのオペラなど。ではなぜ、ゼロから作曲する方法以外にこのような事を手掛けていたのか。

リストは今で言う歩く動画投稿サイト??

当時ヨーロッパの大都市では楽団や劇場がいくつもあり、日常的にコンサートやオペラの公演を楽しむ事が出来た。しかし地方に住む人々はそのような環境に恵まれず、リストはそんな彼らのために各地で演奏活動をい、ピアノ一台で音楽を届ける決意をした。ピアノ曲や自身の作品だけではなく、当時大都市で流行した交響曲やオペラ、その他音楽作品の数々をピアノに編曲し、メロディだけでも覚えてもらいたい一心で発信を続けていた。リストは今で言う歩く動画投稿サイトともいえる音楽家だったのかもしれない。少なくとも、彼のお陰でより多くの国と地域に音楽作品が広まっていたのは間違いない。そしてラ・カンパネラも、その作品の一つであった。

(ピアニスト・金子三勇士)

関連リンク:ラ・カンパネラを聴く

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