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流れる情景を線でなぞった。 震える手で歪んだ。 ぽつりと落ちたのは、 大きな雲を包んだ夕…
金木犀の甘い香りがした。 小さく咲いた蕾がひどく愛おしかった。 胸の中にある水たまりが凪…
ぼくの名前を呼ぶ君の温もりが愛しくて、 そっと閉ざした心の奥にしまった。 ぼくに微笑む君…
何も言えずに立ち尽くした僕。 君は首を傾げて尋ねたけど、 喉まで来た言葉を上手く吐き出せ…
梅雨時の日曜日。 前日の曇りの予報を翻した快晴と 日光を浴びた心地良いそよ風が掠める。 …
雨が降る。 僕は傘をさして歩く。 弾く雨音が足元に落ちる。 ゆっくりと不規則なリズムを刻…
五月、涼しげな風が頬を撫でる。 茜色がさす帰路で天を仰ぐ。 飄々と空に浮かぶあの雲が羨ましかった。 今の僕の心に似合う言葉を探して歩く。 知らない誰かに届けるために書く。 はらはらと 揺らぐ君に花束を。 家に着いた僕はドアを開ける。 部屋に響く鍵の音がやけに大きく聞こえる。 書いた言葉はいつしか枯れたようで 消えかけた線を辿って紡いだ。 不完全なものだとしても。 とんとんと 呑みくだす気持ちは秘密のまま。 また君が泣いている。 吐き出した声が僕の
もしも僕が今朝のご飯を残さず食べたら 良かったのかな。 でも、君は「無理しなくていいよ」…
わたしはカーディガンを着た子熊の人形だ。 サイズは手のひらくらい。 小さなぬいぐるみ屋さ…
この物語は、夜の闇に包まれた貴方の心の中に 灯火をつけるために作られたもの。 眠れない夜…
星が降り注ぐ夜。 外は静まりかえって、終電が駆ける音が透ける。 街灯は灰になって消えた。…
これは私の実体験。 “君”のことを忘れないように書き留める。 私は立派な桜の木の隣に住ん…
春風が靡く、少し寒いと感じた 記憶を手繰り寄せる 無色透明で、粋な空想を 枕元にぽつりとひ…
ぼくは、何を口にしても味気のない 泥人形のような毎日を過ごしていた。 すると、横にいた女の子は言った。 「どうしてこんなに苦しいの?」 ぼくは目を逸らしながら答えた。 「きみもすぐに慣れるよ。」 静かな夜に纏われたぼくの心は まるでシーソーのように覚束なく揺れて、 それまでの穏やかさを失った。 夜があける前、時間が進むのが遅く感じたぼくは 女の子を連れて共に彷徨った。 ワタシは、何を口にしても虚しくなるだけの 幸せに満ち溢れた毎日を過ごしていた。 身にありあまる幸