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宮崎県が和牛繁殖農家に独自の補助策 9月県議会に補正予算を提案。いくらなんでも優遇され過ぎではないか、と思う件。

9月1日の宮崎県内のニュースは一斉に、和牛繁殖農家への宮崎県独自の補助を提案することを報じています。

これは、子牛価格が低迷し厳しい状況にある和牛繁殖農家への緊急対策です。 国の補助制度が適用される和牛繁殖農家へ県が上乗せして補助する形で、九州・沖縄ブロックの子牛の平均価格が60万円を下回った時に、差額の4分の3を国が補助、8分の1を県が補助します。 期間は9月から12月までで、宮崎県内約4440戸の繁殖農家が出荷する2万頭あまりの子牛が対象となります。 また、10歳以上の高齢母牛の更新費用の支援として、1頭あたり5万円を補助する予定で、あわせて1億8100万円が計上されています。

UMKのニュースから引用

牛肉の畜産業者が厳しい状況にあるのは間違いないのでしょうが、それにしても、あまりに自由主義経済の原則を歪める支援策が多すぎるのではないか、と個人的には思います。

まず、宮崎市が子牛売却課税で農家32世帯に合計1千万円以上の課税漏れ。軽く調べたら制度が悪い気がした件 という記事にも書いた通り、牛肉の畜産業者については、「肉用牛売却所得の免税制度」という制度があり、1頭あたり100万円(交雑種80万円、乳用種50万円) 未満であれば、年間の売却頭数が1,500頭まで、所得税や住民税が免除されるという仕組みがあります。

またJA宮崎経済連は独自で雌子牛購入5万円助成 ということが先日発表されました。これは、未だによく意味が分からなっていないのですが、子牛が安くなってるのに、安く買った「購入者側」に更に一頭あたり5万円を補助する制度のようです。

そして今回の、繁殖農家側への価格が低い場合の補助が国からの支援に加えて、さらに県が予算を出して補助するということのようです。

牛肉に関しては、最近はふるさと納税の返礼品にも採用されていて、行政が売ってくれていたりもするわけです。

プロ野球のキャンプには、都合の悪いことには全然出てこない県知事が出てきて満面のニヤケ顔でアピールするなどもしています。

最近は消費が低迷しているということで、メディアには広告費も出さない形で「大変だから県産牛肉を消費しましょう」、みたいなことをテレビや新聞は記事広告みたいなことも頻繁にやるわけです。

これまで「高級品です」といって、県内の一般の消費者のことなど全く考えていないようなお高く止まったお値段で売っておきながら、市況が変わって苦しくなったら「みんなで盛り上げましょう」、と言われても、県民所得も低く消費者物価指数が5年連続で全国最低の宮崎でそんなに協力してくれる人もいないだろ、と思います。

簡単にまとめると、
1. 牛肉の畜産業者には、所得税・住民税の免税の特例制度がある
2. JA宮崎経済連は、購入者側に補助する制度を始めている
3. 平均価格が60万円を下回った時に、差額の4分の3を国が補助
4. 更に県が8分の1を県が補助
5. ふるさと納税の返礼品として採用
6. 自治体の首長が事あるごとにメディアで政治的アピールのために贈呈

というようなことをやっているわけです。規模で行けば簡単に積み上げても10億円単位以上の優遇です。

牛肉の畜産農家が不必要だとは思いませんが、原油高や燃料高に苦しんでいるのは畜産農家だけではありませんし、これらの優遇措置は、合理化や効率化を前提としないもので、業者側に経営改善努力を求めていないもののように見えますから、「あまりに優遇されすぎている」、と感じます。

高校を卒業したら数千人単位で若者が出ていく宮崎県で雇用の受け皿になっていたり、経済の波及効果が非常に高い業種であれば良いと思いますが、そうでもないですし。地域の税収の増加にも寄与しません。

潰すべき企業は、早めに潰さないと地方経済はもっと悪くなるんじゃないのかな、という話 ということも書いたことがありますが、この状態の業者をいつまでも無条件に税金で支援するのは非合理で不公平です。

県知事も県議会も 農業団体の意向に反することはありませんから、この提案もすんなり通ってしまうのだろうと思いますが、「全国初の制度」だと言っても、全国に誇っていい優遇措置でもなく、県民の一人としてはあまりに特定の産業への優遇がすぎるのではないか、と言っておきたいと思います。

追記です:
補助率50%超えはやっぱりひどすぎると思います。


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